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「霊性進化論の光と闇」


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現代オカルトの根源  


 

神智学の創始者であるブラヴァツキー夫人には、その存在をほとんど神格化する

ような手放しの称賛から、「稀代の詐欺師」という厳しい批判まで、きわめて

対照的な毀誉褒貶の評価が与えられています。

 

スピリチュアリズムの大流行した19世紀後半という時代を舞台に活動した

ブラヴァツキーは、神智学という霊的な思想運動の創始者、牽引者であると

ともに、霊媒としても活躍し、その霊媒能力は世間からの注目を集めたが、

1884年に「心霊研究協会」による検証が実施され、その虚偽性を批判

する報告書が発表されることにより、彼女と神智学協会は大きな打撃を

受けることになったということです。

 

厳しい非難を浴びるなかで、世評から距離を取り、主著の一つである

「シーレット・ドクトリン(秘密教義)」の執筆に没頭し、1888年

の公刊の後、3年ほどして病気のため59歳でこの世を去りました。

 

しかし、その後も、神智学協会は存続し、神智学の思想は継承され続け、

後世に様々な影響を与えたことは周知のとおりです。

 

「現代オカルトの根源」の著者大田俊寛氏は、現代の神秘主義、オカル

ティズム諸潮流の思想的根幹として引き継がれているのが「霊性進化論」

であり、それは「シーレット・ドクトリン」によって最初の明確な形式を

与えられたとしています。

 

そして、ブラヴァツキーが創始した神智学の教説は、神秘性とともに難解さ

をもって知られているが、その主な原因は、それが多くの要素を強引に折衷

することによって組み立てられているからだと言います。

 

大田氏によると、彼女の活動期は、ヨーロッパ期、アメリカ期、インド期の

三つに分けることができるようですが、全体としてみれば、彼女の構築した

神智学の教説は、西洋オカルティズムの世界観を基礎に置きつつ、秘密結社、

心霊主義(スピリチュアリズム)、進化論、アーリアン学説、輪廻転生論と

いった雑多な要素をその上に積み重ねていったものと捉えることができる

のであり、その意味では、神智学とは、古代以来の西洋穏秘主義(オカル

ティズム)や秘教主義(エソテリシズム)の伝統に連なるものであり、

その現代的亜流の一つにすぎないといわなければならないだろうと

述べています。

 

また、彼女は、表面的には、当時、伝統的なキリスト教が全体として弱体化

するなかで、新たな世界観として台頭する進化論と、新たな宗教的世界観と

して流行を見せる心霊主義(スピリチュアリズム)の両者を裁然と否定した

のであるが、単に否定するのではなく、むしろ、進化論と心霊主義の構想を

巧みに融合させ、人間の生きる目的は、高度な霊性に向けての進化であること

を明らかにしようとしたのではないかとしています。

 

さて、霊性進化論を壮大な体系にまで打ち立てたのが先に述べた「シーレット

・ドクトリン」だということですが、それは「ジャーン(ドジアン)の書」と

いう神秘的なテキストがベースになっているという。ブラヴァツキーによれば、

その文書は中央アジアの聖地において、アデプト(霊的熟達者)たちによって

古代から保存されてきたものであり、世界中の多くの宗教は、そこに記された

知恵から派生していったのだそうです。

 

「シーレット・ドクトリン」は、第1巻「宇宙発生論」と第2巻「人類発生論」

から構成されていて、まず、「宇宙発生論」においては、宇宙の原初状態から、

太陽系が誕生するまでの経緯が描かれているということですが、要約すると

次のようになります。

 

<原初においては、「永遠の親」という女性の神格が存在し、彼女は「処女卵」

を抱いて眠り込んでいた。するとあるとき、そこに一条の光が差し込み、処女卵

は「世界卵」に変容する。やがて、世界卵は孵化し、そこから「子なる神」と

呼ばれる宇宙意識が誕生する。子なる神は、宇宙を創造するために「七大天使」

や「十二星座天使団」と呼ばれる天使たちを生み出す。そして神と天使たちは、

光線を降り注がせることによって、太陽系の惑星たちを創造する。太陽系の

創造者である宇宙意識としての神は、「デミウルゴス」や「ロゴス」、あるいは

「太陽神」と称される。そして神は、太陽系に「七つの周期」を設定することに

より、その進化を促進しようとする>

 

大田氏は、以上のような枠組みは、全体として、グノーシス主義、プラトン主義、

ユダヤ教カバラといった、古代以来の神秘思想における流出論的な宇宙発生説を

基礎に置きつつ、近代天文学の知見をそこに盛り込んだものと理解することが

できるとしています。

 

次に、第2巻では、上記のようなプロセスから創造された太陽系において、

人間の霊が誕生し、進化を遂げる過程について描かれています。

 

太陽系においては、進化に関する「七つの周期」が設定されたが、地球に

霊が誕生したのは、7周期のうちの第4期にあたる。そして、7つの周期は、

地球上での人類の進化においても反復される。すなわち、地球において人類は、

7つの段階の「根幹人種」を経て進化してゆくとしています。

 

第一根幹人種において「アストラル体」という未熟な霊的身体として登場した

人類は、徐々に物質性の領域に踏み込んでゆき、それは第四根幹人種(アトラン

ティス人)の段階で頂点に達する。人類は幾度も、物質的・動物的領域への転落

の危機に見舞われるが、そのなかで着実に霊性を発達させ、第七根幹人種において

最高度の霊性を獲得することになるということです。

 

大田氏は、宇宙と人類の発生史は、一見極めて複雑で難解だが、内容をよく吟味

すれば、基本的な構図の反復によって物語が構築されているのがわかるという。

すなわち、人類の歴史は、「霊的進化」と「物質的進化」というに二種類の進化

のラインの交錯によって形作られており、そのなかで人類は、霊的進化のライン

に従えば神的存在に近づくことができるが、それとは反対に物質の進化のライン

に導かれれば、悪魔や怪物を含む動物的存在に墜してゆくことになるという構図

になっているとしています。

 

つまり、霊性進化論の大枠は、霊性の進化か退化か、神人が獣人か、という

二元論を基本線とすることによって構築されているということです。

 

そして、大田氏は、ブラヴァツキーの生涯は紆余曲折に富み、その著書も重厚かつ

難解なものであり、その思想が当時の人々によく理解されたとは到底思えず、

また、彼女自身が数々の神秘化やごまかしの手法によって、自説の深遠さを過分

に装っていたということは否定できないとしながらも、その思想のなかには、

強靭な体系を構築するための諸要素が確実に含まれていたと述べています。

 

それを列挙すると、次のようになります。

 

霊性進化 人間は、肉体の他に霊体を持つ。人間の本質は霊体であり、

その性質を高度なものに進化させてゆくことが、人間の生の目的である。

 

輪廻転生 人間は、霊性を進化させるために、地上への転生を繰り返す。

地上での行いは「カルマ」として蓄積され、死後のあり方を決定する。

 

誇大的歴史観 霊体は永遠不滅の存在であるため、個人の歴史は、天体・

人種・文明等の歴史全体とも相関性を持つ。これらの集合的存在もまた、

人間と同様に固有の霊性を有し、円環的な盛衰を繰り返しながら進化を

続けている。

 

人間進化/動物化 人間は霊的な成長を遂げた結果として、神のような

存在に進化しうる。しかし、霊の成長を目指さず、物質的快楽に耽る者は、

動物的存在に退化してしまう。

 

秘密結社の支配 人間の進化全体は「大師」「大霊」「天使」等と呼ばれる

高位な霊格によって管理、統括されており、こうした高級霊たちは、秘された

場所で結社(大白色同胞団)を形成している。他方、その働きを妨害しようと

目論む悪しき低級霊たちが存在し、彼らもまた秘密の団体を結成している。

 

霊的階層化 個々の人間・文明・人種は、霊格の高さに応じて階層化されて

いる。従来の諸宗教において「神」や「天使」と呼ばれてきた存在は高級霊で

あり、それと反対に「悪魔」や「動物霊」と呼ばれてきた存在の正体は低級霊

である。

 

霊的交信 高級霊たちは、宇宙の構造や人類の運命など、あらゆる事柄に

関する真実を知悉しており、必要に応じて、霊媒となる人間にメッセージを

届ける。

 

秘密的伝統・メタ宗教 霊性進化に関する真理は、諸宗教の伝統のなかに

断片的な形で受け継がれている。ゆえに、それらを総合的に再解釈し、隠され

た真理を探り当てる必要がある。

 

ブラヴァツキーの死後、彼女の権威を支える根拠であった「マハトマ書簡」に

真正性に嫌疑がかけられていたこともあり、神智学協会は、少なからず

混乱に見舞われ、協会の指導者の地位をめぐる争いが起こり、それに

よっていくつもの分派が生み出されることになります。

 

しかし、上記のような諸要素は、神智学の運動が継承されるなかで、あるいは、

その他の諸思想に影響を与えるなかで、徐々に明確化・具体化されてゆくことに

なったということです。

 

次回は、ブラヴァツキーに対するこれとは異なった見方、評価を紹介してみたい

と思います。

 








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テーマ : スピリチュアル
ジャンル : 心と身体