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『霊魂研究へのいざない-死後の世界や霊魂について学ぶには-』


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霊魂研究 
 (水波一郎 著 アマゾン 発売)


本書の大きな特徴として、著者の水波一郎氏は<はじめに>のなかで、

 

「私は霊媒です。霊媒というのは、霊魂の思いや主張をこの世に表現する、

いわば受信機のような存在です。私は子供の頃は普通の少年でした。

つまり、いわゆる先天的な霊能力者ではありません。」

 

「それがどうした訳か、今では、霊魂の受信機になっています。霊魂の主張

を本にして発表しているのです。」

 

「こうした体験から言えるのは、少なくとも、それまで私の頭に入っていな

かった事を、霊魂は次から次へと語ってきたという事です。死後の世界の

ことについても教えてくれました。どんな人が死後苦しむのかも分かり

ました。ですが、その主張は他の人の主張とは違っていました。」

 

「霊魂の世界の事は、この世の人間には分かりません。まずは、霊魂の言う

事を聞いてみると良いと思えます。」

 

「本書は霊媒が書いた、霊魂研究についての書です。」と述べておられます。

 

そして、そうした立場から、人はみな霊魂の勉強、そして研究が必要である

と主張されています。

 

なぜなら、死はまだまだ先であったとしても、人は「幽体」という肉体と

重なっている身体、死後も使用することになる霊的な身体を所持していて、

霊魂や「幽気」という霊的な気とは、毎日のように接しているからだそう

です。

 

よって、人生に幽体や幽気の勉強は不可欠であり、我々にとって霊魂に

関する本格的な研究はとても大切なことであるということです。

 

しかしながら、霊魂や死後の世界についての研究というものは、主観的な

推測ではなく、科学のように客観的な事実を追及していくとしても、現代

の科学では証明もできず、根拠も示せないという状態にあります。

 

では、どのような形でその勉強、研究に取り組めばよいのでしょうか?

 

水波一郎氏は、さまざまな説、諸々の方法について、その是非を丁寧に

論述されていますので、詳細については本書をお読み頂きたと思います。

 

ただ、「はじめに」にもあったように、著者の霊媒として深い経験から、

霊魂研究における霊媒現象の重要性とその難しさについてかなりの

ページを割いておられます。

 

そこでは、霊媒現象の真偽、高低の判断の難しさと併せて、「霊能力や

霊媒は命懸けだと思ってください。誰でもなれるような簡単なものでは

ありません。私は自分が霊媒ですが、霊媒を育てたいと思いません。苦悩

との戦いは、他の人が理解できない性質のものだからです。」と述べられ、

「ゆめゆめ簡単に霊媒になれるとは思わない事」だと警告をされています。

 

そして、さらに幽体の研究の必要性、死後の世界の現実、霊的な真実を

知る必要性にも触れられています。

 

是非、多くの方に読んで頂きたいと思いますが、少しでもその内容をイメ

ージしていただくために目次を紹介しておきたいと思います。

 

はじめに

第一章     霊魂はいる?

1 霊魂の勉強が必要です

2 霊魂は居ないと言う人の考え

3 それでも、居ないと言う人達

4 証言の真偽

5 霊魂の実在の研究

 

第二章     さまざまな説

1 霊魂は居ないのか

2 霊魂の確証

3 霊的な説の真偽

 

第三章     勉強の方法

1 明らかな嘘をはずす

2 定義の違い

3 本の選び方

4 本のポイント

 

第四章     霊魂現象の現実

1 霊魂の思いを知るには

2 霊能力者と病気の人との違い

3 霊能力の限界

4 霊媒現象

5 霊媒現象のミス

 

第五章     霊魂と霊媒

1 霊魂が霊媒を使用するには

2 霊媒が知っている事

3 ニセモノという誤解

 

第六章     霊媒になろうとする人

1 真実の探求

2 霊媒現象の練習

3 霊媒の恐怖

4 ニセモノの主張

 

第七章     幽体の研究

1 幽体のという身体

2 幽体の性質

3 この世の人の幽体

 

第八章     この世の人にとっての最善

1 霊的な体験

2 研究すべき事

3 最高の霊魂通信

 

第九章 死後の世界の現実

1 死後の世界へ行く時

2 心の中の思い

 

第九章     霊魂に聞いた話

1 この世で霊魂を信じなかった人

2 この世でニセモノの霊能力者を信じた人

3 この世の人生に必要な事

おわりに

 

以上ですが、<おわりに>において、<霊魂の研究はこの世の人達には

とうてい分からないほど奥が深い。幽体の上に霊体という身体があり、

その研究もまた、霊魂研究のテーマになりうる。しかし、私達にはそんな

難しいことは分からない。まずは、死後、苦しまなくても済むようになり

たいものである>と述べられています。

 

なお、本書は入門書であるため、個々のテーマについて細かく掘り下げる

ことができないという側面があります。よって、より詳しく知りたいという

方には、それにふさわしい書を示されていますので紹介しておきたいと思い

ます。

 

霊魂が居るか否かについて  『霊魂は居ると思いますか?』

死後の世界について     『死後の世界で恋をして』

霊魂からに通信       『霊魂イエス』『神体』『龍』

霊的な事全般について    『霊魂に聞く』『霊的生命体として』

幽体について        『幽体の悲劇』

霊的な能力や技術について  『霊的能力の謎』『霊的技術』

霊的な訓練について     『神伝禊法』『神伝鎮魂法』『瞑想の

霊的危険』

スピチュアルについて    『霊魂からの伝言』

指導的な立場の霊魂について 『指導霊』

救いについて        『たましいの救い』

悪い霊魂について      『人類は消滅すべきか』『真実を求めて』

宗教について        『霊魂に聞くⅡ』

動物の霊魂について     『ガンバレ!動物霊魂』『ネコの死後は

どうなるの?』

 

とにかく、死というものは何人も避けることはできないものであり、すべて

が霊魂となる身であるゆえ、多くの方に読んでいただければと思います。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
    
 
    
 
    
 
    
 
    
 
    
 
    
 
    
 
 
    
 
 
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ラグナロク(神々の没落)-北欧神話5-


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北欧神話の世界 



ロキの奸計によって殺されたバルドルの亡骸を船にて葬送するときには、

オーディンとフリッグの夫婦神はもちろんのこと、ヴァン神族の兄妹神

フレイとフレイヤばかりか、霜巨人と山巨人の多くも参加していたという。

 

だが、この葬礼参列者たちは、ラグナロクという「世界の終末」において、

みな滅び去ることが運命づけられている者たちのようなのです。彼らは、

バルドルをひとしく自分たちのスケープゴート(贖罪の山羊)として海の

彼方に送り出したかに見えますが、バルドルの放逐は、はたして彼らの罪や

穢れを祓うことになるのでしょうか?

 

どうも、このアースやヴァンの神々や巨人族が参列しているバルドルの葬礼

には神々の番人と言われ、巨人や魔物たちが襲来するラグナロクが到来する

とき、ギャッラルホルンという角笛を吹き鳴らし、神々に覚醒をうながすと

いう神、ヘイムダルも駆けつけているようなのです。

 

その彼が登場するということは、それでも逃れることのできない運命づけ

られた最後の戦闘のときが真近に迫っていることを暗示しているらしい

のです。

 

さて、ロキの一族は、いずれも業罰をこうむり、束縛されています。ロキの

息子とされるフェンリル狼は、グレイプニルという名の魔法の足かせをかけ

られた上に、ゲルギャという枷をはめて、神界の岩で身動きがとれないよう

にされ、同じく、ロキの息子とされるミズガルズ蛇も大地を取り巻く海の

真ん中に投げ入れられ、自分の尻尾を噛むという「円の呪縛」をこうむって

おり、そして、ロキ自身はバルドル殺害の後で、鮭に変身して逃げるが、

神々によって捕らえられ、自分の息子ナリの腸でもって頑丈な三つの岩に

捕縛され、その頭上から蛇の毒が滴るように仕向けられて苦しんでいる

状態なのです。

 

しかし、ラグナロクの時がいたるや、すべての足枷と縛(いまし)めは破壊

され、ロキを先導者としてムスペッル(「世界の滅び」の意)の軍勢が東

より攻め寄せてくることが予言されています。

 

その理由としては、前回、引用した『生と死の北欧神話』において、水野

知昭氏は、<ロキに対して、必要以上にバルドル殺しの責任が着せられて

いるのは、まさしくロキ自身が、神々が創造行為の過程で犯した過去の罪業

を背負わされているからにほかならない。巨人族の出身でありながらアース

神族の仲間入りをしているロキは、二つの異なる世界の境界的存在者である。

純粋無垢のバルドルとは異なり、「犠牲者」に仕立てられたロキの両義性は、

神々ばかりか、巨人族やロキの一統なる魔物たちの「邪悪と災厄」をも祓い

清める結果となるのだ。ラグナロクの最終決戦において、彼らが結集して

「神々を滅ぼす軍勢」となりうる由縁はそこにある>としています。

 

束縛されて横たわっている魔物、そしてそれを破壊して逆襲する怪物とは、

世界破壊を待ち受ける際の恐怖を象徴的に表現していると思われますが、

いかなる時に、このような呪縛が解け、魔物たちを解き放つことになる

のでしょうか?

 

水野知昭氏は、「それはオーディンの愛息バルドルが殺された時」だと言い

ます。「あらゆる称賛を集中して浴びていたバルドルが「円形を成す神々

の集団」の、まさに「真ん中」で殺されたという伝承事実に改めて着目

すべきだ。」と言うのです。

 

北欧神話に描き出された世界観によれば、人間の住む大地はミズガルズ(

ミッドガルド「中つ国」)と称され、その外側が「円形をなして」いたと

される。そして、ミズガルズ蛇については、来るべき大災難と不幸を予知

した神々の計略とオーディンの神力によって、「すべての地を取り囲む深い

海」の中に投げ入れられ、大きく成長した後にも、その海原の「真ん中」

で自分の尻尾を噛むように仕向けられたということであり、この世界は

三重、四重に「円形をなすもの」によって成り立っているという考えが打ち

出されているとしています。

 

そこで、ロキはその「円形」の外側にいたホズを唆し、「円の集団」に参加

させた。こうして彼を下手人に仕立て上げ、バルドル殺しを実現した。まさ

に「束縛と解放の図式」の体現者であったロキが、バルドル殺しの教唆者と

化すことによって、神界の「真ん中」に位置する「神々の円」を破砕した、

そして、そのことによって、ロキの息子とされる魔物たち、とりわけミズ

ガルズ蛇を、世界の外縁を形づくる円の呪縛から解き放ったと読み解くこと

ができると述べています。

 

こうして、ラグナロクの最終決戦は開始され、巨魔たちの大攻勢のさなか、

「炎熱の国」ムスッペル(ムスペルスヘイム)の守護者であったスルトは

燃ゆる剣を振りかざして突き進んできます。オーディンはフェンリル狼と、

ソールはミズガルズ蛇と対決し、フレイ神はスルトと相対し、それぞれ

壮絶な戦闘を繰り広げることになります。

 

オーディンは狼に飲み込まれるが、息子ヴィーザルが直ちにその復讐をとげ

ます。ソールはミズガルズを見事討ち果たしますが、みずからもその毒を

浴びて死にます。フレイはその時、剣を所持していなかったために苦戦を

強いられ、ついに敗れ去ることになります。

 

ール神は冥府の犬ガルムと相討ちにとなり、ロキを迎え撃つヘイムダル

も、同じく相討ちに終わります。そして、スルトは火炎を放ち、全世界が

焼き尽くされます。

 

予言が語るように、神々も巨人族も、人間の族もことごとく滅んでゆき、

天がはり裂け、星々が落ち、大地は海に没するのです。

 

しかし、これで北欧神話の語りが終わりを告げるわけではありません。

 

『詩のエッダ』の「巫女の予言」では、時を経て、海の中より再び「とこ

しえに緑なす大地が浮かびくる」とされるのです。そして、不思議にも

バルドルは、自分を殺したホズとともに、この世によみがえってくる、と

うたわれているのです。

 

水野知昭氏は、<バルドルと、その仇敵であったホズの蘇生、それは積年

の敵意と不和の解消を象徴し、まさに多くの犠牲を払うことによって、

「平和と豊穣」の時代が再来することの予兆となっている。>

 

<「ありとあらゆる災厄が吉に転じよう、バルドルは来たらん」という予言

は、「バルドル殺し」の事件がひとつの「畏敬すべき運命的な出来事」と

して繰り返し生じうるが、その惨劇を経験することによって、世界が更新

され、バルドルは再来するだろう、という民の期待と祈願が存在していた

ことを示している。>

 

<こうしてラグナロクの試練をくぐりぬけて、何人かの者たちが生き残った。

ヴィーザルとヴァ―リ、そしてソール神の息子なるモージとマグニたちだ。

それぞれ「勇武」と「強力」を意味し、まさに次代を担う若き勇者の登場を

物語っている。>

 

<また、とある森の中で朝露で命をつなぐ者がいて、彼らから新たに人類が

発するとされる。ちょうど、ユミル殺害のあとに発生した大洪水を生き残っ

た巨人がいたのと同じように。まさに、すべてのものが滅んだ後の「夜明け」

の記述であり、大いなる死のあとに生の胎動がはじまる。と同時に、円環的

な神話の語りがここで完結をみることになる。>と述べています。

 

ところで、神々の破滅に関するこのようなラグナロク神話というものに対し、

研究者の間で「ラグナロク」をヴァイキング時代にキリスト教の影響下で

創造されたものとする見解と、これらの表象を、北欧の太古の土着的な根源

から流出してきたものと見なす見解があるようです。

 

アルセル・オルリックは、著書『北欧神話の世界-神々の死と復活-』の

なかで、今までどちらの側でも、問題全体の総合的な論及は行われなかった

としながら、エッダ以外の北欧の民族信仰などの基礎資料を検討した結果、

「ラグナロク」が全体としてキリスト教起源を有する確率は決定的に失われ

たと述べています。

 

つまり、キリスト教からの借用として強調する特徴の大多数、たとえば、

世界炎上・悪の終結・至福者の住まい・一切を統べる神といったものは、

北欧共通の民間伝承には発見されないものの、個々のいくつかの基礎資料

には発見しうることを強く主張できるとしています。

 

そして、アルセル・オルリックは、北欧の「ラグナロク」はその根源をキリ

スト教には有しておらず、関連しているのは他の民族の太古の諸表象である

と結論づけています。(もっとも、「巫女の預言」には、キリスト教の影響が

認められるとしていますが。)

 

他の民族の太古の諸表象とは、一つは、西方からのケルト的流れであり、

もう一つは、東方からの流れである。ケルト人からは没落の全体的な特徴を

借用し、東方民族からは荒々しい未開性、フェンリル狼の来襲による直接的

な恐怖を借りたとしています。

 

かくして、北欧的所産というべきものは、「ラグナロク」神話全体ではない。

北欧的なのは、全存在が描かれる際の暗い背景として没落を固持する憂鬱

さである。没落になることを承知している恐るべき合戦を凝視する沈着冷静

な真摯さが、北欧的なのである、と述べています。

 
 
 
 
 
 
 
 
 神伝鎮魂法
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神々と巨人族との戦い-北欧神話4-


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ロキ2


なぜ、神々と巨人族は争うことになったのでしょうか?

 

一説によると、オーデン、ヴィリ、ヴェーの三神が「霜の巨人」の始祖

であるユミルを殺して世界を創ったために、その子孫に襲われるのでは

ないかと戦々恐々としていたのだということです。

 

オーデンの恐れと不安は他の神々にも伝わり、何かと巨人族を痛めつける

事件が起こる。特にトール神は神々の国アースガルズに侵入してきた巨人を

ことごとく打ち倒したり、しばしば巨人の国ヨトンヘイムまで遠征して、

数多くの巨人たちを討ち取ったりしているのです。

 

よって、巨人族は単なる「悪」ではないのです。巨人族は神族に対して力で

劣らないだけではなく、文化面においても、巨人族はどの神族よりも勝って

いるところが多いとされます。

 

トール神の武器である槌ミョルニルや、フレイの持ち物である不思議な船

スキーズブラズニルなど、魔法の武器や道具の多くは、原初の巨人ユミルの

肉から生まれたドヴェルグ(小人族)が作ったものなのです。

 

主神であるオーデンの豊富な知恵についてさえも巨人族から得たものが

多いのであり、北欧神話においては、神々の大切な武器や道具とされている

ものはほとんど神々からは「悪」とされ、忌み嫌っている巨人族からもたら

されているということになります。

 

それどころか、オーデン、ヴィリ、ヴェーの三神さえも、元をたどれば

巨人の娘ベストラから生まれたとされているのです。

 

さて、巨人族の神話といっても多岐に渡りますので、ここでは巨人族の中

で最も注目すべき存在であるとされる「ロキ」に焦点を絞って紹介して

みたいと思います。

 

ロキは、巨人ファールバウテの息子で、オーデンとは「互いの血を混ぜ

合わせた」血盟の兄弟とされ、アース神族に迎え入れられて、トールや神々

の番人ヘイムダルと関りが深く、しばしば行動を共にしています。

 

彼には子供も多く、有名なものには、巨人族の女アングルボザとの間に

生まれた狼フェンリル、大蛇ヨルムンガンド、冥界の女王ヘルなどが

います。

 

ロキは、善と悪の両方の顔を持つ神とされます。「性格は悪く、行動もすこ

ぶる気まぐれだ」とされ、神々を危険にさらす一方で、巨人族に盗まれた

トールの槌ミョルニルを奪回するなど、神々を助けることもありました。

 

また、ロキとは「閉じる者」、「終える者」を意味し、世界の終末をもた

らす神であるともされますし、元来は、火や燃えるような夏の炎暑を支配
し、ある場合には苦痛を、またある場合には助力を与える自然神であると
も言われています。

 

なお、ロキは、狡猾で悪知恵が働き、変身能力もあり、両性具有でもあった

とされますが、このような存在は神話の世界ではトリックスターと呼ばれ

ています。トリックスターは、単なる破壊者、秩序の騒乱者ではありません。

彼の活動によって、良い場合も悪い場合もあるが、何か新しいものが生じ、

世界は変化していく、あるいは、硬直した社会が再活性化していくと

されています。

 

さて、このような微妙なロキの立場は、最高神オーデンの息子バルドル

の殺害に関与したことから神々との決定的な対決へと変化していきます。

 

あるとき、不死身であったはずのバルドルが殺されるのですが、それは次の

ようなあらすじになっています。

 

<あるときバルデル(バルドル)は、ひどく不吉な夢を見たことがあった。

あった。そこで、アースの神々に自分の見た夢のことを話すと、神々は会議

を開いた後に、だれひとり決してバルデルに害を加えないという約束を、

世界のあらゆるものと結ぶことにした。>

 

<そこで母神のフリッグがあらゆるものにそのことを誓わせると、火と水、

鉄その他のあらゆる種類の鉱物、土や石、動物や虫にいたるまでが、いか

なる危害をも決してバルデルには加えないことを約束したのである。>

 

<こうして神々は安心すると、不死身となったバルデルをめがけて何かを

投げつけることに娯楽を見出した。バルデルをみなの真ん中に立たせて、

ある者は矢を射るし、他の者は刀で切りつけたり、石を投げつけたりした。

そうして彼らは、自分たちの腕前を競うことのできるひとつの新しい遊び

を見つけだしたことに気をよくしたのである。>

 

<ところが、ロキがその有り様を見たとき、バルドルが少しも負傷しない

のは不愉快だと思った。よって、ロキは女の姿に変身すると、フリッグの

もとへ訪ねていった。フリッグは女の姿を見ると、神々が何をしているの

かをたずねた。女(ロキ)は答えた。「皆がバルドルめがけて何かを投げ

つけるのですが、彼は少しも負傷しないのです。」と。>

 

<するとフリッグは言った。「どんな鉱物も木々もバルドルに危害を加える

ことはできない。この私がそれらすべてから誓いを取りつけたのだから。」

そこで女は尋ねた。「すべてのものがバルドルに害を及ぼさないと約束した

のですか?」>

 

<それに対してフリッグが答えた。「ヴォルホッル(ワルハル)の西方に

一本の木の枝が育っている。それは宿り木と呼ばれているが、その木だけは

誓いを立てさせるにはまだ若すぎると思われたのです。」と。それを聞くと

女はその場を立ち去った。そして宿り木を引き抜き、神々の集まる場に

もどってきた。>

 

<オーデンの息子のホッド(ホズ)が神々の輪の一番外側に立っていた。

というのも、彼は盲目だったからである。そこで、ロキは彼に尋ねた。

「どうしてお前はほかの神々のようにバルデルに物を投げないのか?」

ホッドは答えた。「私にはバルデルがどこにいるのか見えないし、武器も

持っていないから。」と。>

 

<そこでロキは言った。「お前もほかの神々を真似てやってみるがよい。

他の者と同じようにバルデルに敬意を示すのだ。彼がどこに立っている

かは、私がお前に教えてやろう。この枝で彼を刺すのだ。」ホッドは宿り

木を受け取って、ロキに教えられるままにバルドルに投げつけた。木は

槍となってバルドルを刺し抜き、彼は地に倒れて落命した。>

 

<バルデルが倒れると、神々は茫然と両手を垂れて立って、無言で互いに

顔を見合わせるばかりだった。そして、この所業を犯した者に対して

同じ思いを抱いた。しかし、そこは神聖な場所だったので、誰も復讐を

遂げることができなかった。>

 

<とりわけオーデンは、この出来事を最も憂慮すべきものとして胸中で

受け止めていた。というのも、バルドルに死によって、いかに大いなる殺戮

と喪失がアース神たちを見舞うことになるかを、彼は誰よりも鋭く察知して

いたからである。>

 

その後、さらに死んだバルデルを何とか甦らそうとする神々の試みをも妨害

したロキは神々の怒りを恐れて逃亡するのですが、この「バルドル殺害神話」

は、不思議な感覚をもたらすと水野智昭氏は、『生と死の北欧神話』の中で

述べています。

 

つまり、バルドル殺しの犯人は、その語りに従えば、ロキと盲目のホッド

(ホズ)であるが、よく目を凝らせば、この神話に登場するキャラクターの

全員に殺しに責任があるように思えるというのです。

 

父オーデンは息子がホッド(ホズ)の手にかかって殺されることを予知

していたのだが、その惨劇に発生を阻止できなかったし、また、母神の

フリック自身の口から、愛息バルドルを死に追いやる「宿り木」の秘密が

暴露されているのであり、バルドルが殺されることは、最初から運命づけ

られているように見えるとしています。

 

しかし、そうなると、ロキという存在に対する見方も変わってくるように

思われます。

 

バルドルは母神の呪術におかげで「不死」となり、その呪力が有効である

かぎりは、神界において永遠に生き続けることになる、いわば、母神の介入

によって、バルドルは「生と死の循環原理」を打ち破る危険な存在と化した

ことになります。

 

そして、他のすべての神々がバルドルを標的として攻撃する奇妙な娯楽、

ゲームが流行し始めた。これは集団の暴力に見えるものの、その内実は、

バルドルの不死性を確認するものであり、皆がそれに打ち興ずる中で、

ひとりロキだけは、この光景を見て「不愉快に思った」のです。

 

バルドル殺害があたかもロキの個人的な感情より発したかのように思える

記述であるが、死の世界を領有するヘルを娘に持つロキにとって、「不死」

なるバルドルは「生と死の循環原理」に違反する者以外の何ものでもないと

すると、ロキには「不愉快」きわまりなく、むしろ、バルドルの「不死」の

呪術を打ち破り、「生と死の原理」をこの世に復活するという難題がロキに

課せられていたと言えるのです。

 

<バルドル殺害は「神々の輪」の真ん中で発生した。その死は「バルドル

虐待ゲーム」に参集した全員の責任であるだろうが、もし仮に彼らが責任

を免れるのであれば、最後に「ゲーム」に加わったホズとその教唆者ロキ

も、外見上は、バルドルの不死性に「敬意」を示そうとしたかぎりにおいて、

免責されるべきだろう。巧妙に仕組まれたこの完全犯罪が、ひいては世界の

没落と、豊穣なる生を招き寄せている。>と水野智昭氏は述べています。

 

なお、<世界各地の神話において、聖なる犠牲獣の供犠とパラレルに神聖

なる王者の犠牲的な死が語られているが、それに照らすと、北欧神話の

なかの一連の「殺害」の意味するものが鮮明になってくる。たとえば、

巨人ユミルの殺害によって宇宙が創成され、虐殺されたグッルヴェイグが

蘇生を繰り返すことによって、両神族が「和平」を結ぶに至った。そして、

女神イズンの略奪者となった巨人スヤナの虐殺が、ひいてはその娘スカジ

とニョルズ神との聖婚を導き、アース神族と巨人族の一時的な和解をもた

らしたが、これらのことから、バルドルも「神々の犠牲者」として殺され

ねばならなかったと考えられる。>としています。

 

さて、その後、逃亡していたロキは捕縛、幽閉され、アース神はロキへの

復讐を成し遂げたかに見えたが、結局、それはオーディンの不安どおり、

巨人族との最終戦争(ラグナロク)のきっかけをつくることになり、

世界は終末へと突き進みます。

 

次回は、そのラグナロク(神々の没落、神々の運命)について迫って

みたと思います。


 
 
 
 
 
 
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神々の戦い アース神族VSヴァン神族-北欧神話3-


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神々の戦い 



北欧神話では、オーディンを主神とするアース(アサ)神族とニョルズを

主神とするヴァン(ヴァナ)神族という二つの神族が併存していたが、

両神族の間でこの世で最初の戦闘が始まったという。

 

『詩のエッダ』の「巫女の予言」では、グッルヴェイグという名の女性が、

ハール(高き者、オーディンの別名)の館にて槍で刺され、何度も繰り

返して焼かれたことから戦いが始まったとされます。幾度も彼女を焼殺

したのだが、それでも彼女はなお生きていたということです。

 

しかし、なぜ、グッルヴェイグという女性はそのような酷い仕打ちを受けた

のでしょうか?

 

グッルヴェイグは、字義的には「黄金の呪力」を意味するところから、一説

では、富裕で煽情的なヴァン神族がアース神族のもとに禍の種としてグッル

ヴェイグ(黄金の酩酊)と呼ばれる女を送り、ことに女たちの心を惑わせた

からであるとされているようです。

 

また、アース神族とヴァン神族の原初の戦争は、両者の共存を正当化する

ためのもので、むしろ、両者の相互補完性、連帯性を示す神話であるとも

言われています。

 

これに対して、水野知昭氏は、『生と死の北欧神話』において、グッル

ヴェイグは、敵対関係にあった両神族間で和平の誓約を交わすために、

アース神族の中のある特定の神への花嫁となるべき女性であったと推定

できると言います。

 

しかし、アース神族たちは、グッルヴェイグの神秘的な美しさと身につけて

いた黄金の魔力に抗うことができずに、ヴァン神族の共同体から彼女を掠奪

し、集団での暴力に及んだのだと考えられるとしています。

 

少なくとも原神話においては、アース神族に対して「災厄」や「堕落」を

招くために送り込まれたわけでは断じてないと述べています。

 

かくして、オーディンをはじめ、アース神族の神々は裁きの場に出て、果

たしてアース神族が罪科を負うべきか、それとも、かの諸々の神々(ヴァン

神族)が貢ぎ物を得るべきか、を協議するのですが、どちらも選択しない

ことを決め、オーディンが敵勢のなかへ槍を投げ、最初の戦いがはじまる

のです。

 

オーディンは軍勢を率いてヴァン族に戦争をしかけたが、彼らは頑強に抵抗

し、その国土を守った。どちらの側もかわるがわる勝利を得て、互いに相手

の土地を蹂躙しながら損害を与えることとなり、双方とも戦闘に倦み疲れた

ので、和平の会議をもうけ、平和協定を結び、人質を交換することになった

ということです。

 

「ユングリンガ・サガ」には、その「神々の交換」という不思議な話に

ついて次のように語られているようです。

 

<ヴァン神族の側は、富裕なニョルズとその息子フレイという最も優れた

者たちを人質にした。しかし、これに対してアース神族の側は、ヘーニル

という名の者を送り、首長にするには彼こそ適任だと説明した。彼は体が

大きく、すこぶる美男であった。また、その者といっしょに、アース神族

はミーミルと呼ばれる最も賢い男を送ってよこした。そこで、ヴァン族は、

そのお返しに、自分たちの集団の中で最も聡明な者を送りとどけたのだが、

その者の名はクヴァシルといった。>

 

<さて、ヘーニルがヴァナヘイム(ヴァン神族の国)へ到着すると、早速

彼はその首長にまつり上げられた。ミーミルは彼に事あるごとに助言を授け

た。しかし、ミーミルが近くに不在のまま、ヘーニルが会議や集会に出席

させられ、ある難題について彼の意見が求められた。そのときには、彼は

いつも同じ返答で、「ほかの者たちに決定させてくれ」と言った。>

 

<そこでヴァン神族の神々は、人質交換において自分たちはアース神たちに

欺かれたのではないかと疑いだした。よって彼らはミーミルを捕えて首を

はね、その頭部をアース神族のもとへ送りつけた。>

 

<オーディンがそれを受け取り、防腐のために薬草を塗り、その上で何度

も呪文を唱えた。そして、ついに大いなる呪力を吹き込み、その頭部が彼に

話しかけ、彼のために多くの神秘的な話を語りだしてくれるようにした。>

 

<オーディンは、ニョルズとフレイを「供犠の祭司」の地位に任じた。

そして彼らはアースたちの間で「祭司長」となった。フレイヤはニョルズ

の娘だった。彼女は「供犠の女祭司」だった。ヴァン神族の間に流行して

いたセイズという呪術を、フレイヤが最初にアース神たちに伝授した。>

 

<ニョルズがまだヴァン神族の一員だったときに、彼は自分の妹を妻と

なした。というのも、それが彼らの慣わしだったからだ。こうして生まれ

たものがフレイとフレイアだった。しかし、アース神族の間では、その

ような近親との婚姻は禁じられていた。>

 

つまり、ヴァン神族の側は、ニョルズとフレイという主神クラスの者を

人質として派遣したが、アース神族側が送り込んだ人質のヘーニルは、

ヴァンの国での首長の役を満足に果たすことができなかった。彼はミー

ミルがいなければ、単独では物事を決定できず、統治者としての叡智を

欠いていたのです。

 

その上、「最高の賢者」ミーミルを人質に得た返礼として、ヴァン神族の

中で「最も聡明な」クヴァシルをアース神族のもとへ送り届けたのだ。が、

この人質交換は割が合わず、騙されたことを悟ったヴァン神たちは、ミー

ミルの首をはねて、それをアース神たちに送り返した。

 

ところが、オーディンは呪術を駆使して、そのミーミルの頭部から数々の

「神秘的な話」を聞き出したということです。

 

よって、こうした人質の交換は、ヴァン神族の側にとっては二重、三重の

意味で大損をする結果となります。

 

これに対して、アース神の仲間入りをしたニョルズとフレイは、「供犠の

祭司」に任じられて、宗教的に重要な働きをしています。そればかりか、

ニョルズの娘フレイアは、「供犠の女祭司」を務め、「セイズ」という新

しい呪術を持ち込み、アース神たちに伝授したとされます。

 

いわば、アース神族の側にとって人質交換は、ヴァン神族の宗教を吸収し、

みずからの中に包括するという効果を生み出したということになります。

 

なお、「セイズ」という名の呪術は、通常、シャーマニズムの一種だと解さ

れているようです。そして、エッダやサガの数ある文献の中に、脱魂状態

(エクスタシー)、補助霊、他界への旅、そして変身のイデオロギーなど、

北方ユーラシア系のシャーマニズムの要素が認められるとも言われています。

 

ところで、「供犠の祭司」、「供犠の女祭司」とあるのは何を意味するので

しょうか?

 

水野知昭氏は、<二人の男性祭司と一人の女性祭司が犠牲祭を執行したと

見られるが、その関係は必ずしも明確ではない。三名が協同で同じ神事に

関わったか否かは不明である。仮に、三者がある同一の犠牲祭に関与した

とするならば、女祭司が中心的な役割で、二人の男性祭司たちはその補佐

役だったのだろうか。あるいは、その逆が真相であるか、にわかに判断し

がたい。しかし、前者が基本方式であった可能性が高いだろう>と述べ

ながら、<いずれにしても、ここにトライアッド(三組み神)の観念が

ひそんでいる。上記の推定にしたがえば、セイズ呪術に最も卓越した女

祭司フレイアが中心の座を占め、女性シャーマンの役割を果たし、二人の

供犠の祭司たちは「犠牲獣の血を流す」祭礼の執行者を演じさせられたと

言えるだろう>としています。

 

それと、ニョルズとフレイの父子が「人質」として送り込まれたことは明記

されているが、フレイアに関しては、どのような事情でアース神族の共同体

へ連れてこられたかは不明であるし、フレイヤの参入によってアース神族の

間に「セイズの呪術」が広まったということですが、彼女の母の所在も不明

であることが気になります。

 

ニョルズがまだヴァン神族の社会に所属していたときに、自分の妹を妻とし、

フレイとフレイヤの兄妹をもうけたということですが、ニョルズの妻とは

一体誰で、その後どうなったのでしょうか?

 

水野知昭氏は、オーディンの妻であるが、その出自が不明のフリッグが、

元来、所在不明と思えたニョルズの妻であったのではないかと想定できる

と述べています。

 

なぜなら、ニョルズがアース神たちの社会に参画させられると同時に、

もはや自分の妹を妻としていることは許されず、彼女を異神族の主神オー

ディンに譲り渡さねばならなくなったと思われるからだ、と言うのです。

 

よって、オーディンの妻神フリッグは、本来、ヴァン神族に属し、アースの

三神によって略奪された女神である、そして、それが最初に述べたグッル

ヴェイグという女性の正体であると推論しています。

 

そして、ニョルズ、フレイ、フレイヤのヴァン神族の三組神は、支配神と

してのオーディン、ヴェー、ヴィリの三兄弟神とまさに対照的な役割を

果たしているように思えるし、ある意味では、後者のトライアッド(三組

み神)の統治権を補佐するための宗教的な役割を負わされているかに見え

る、としています。

 

さて、このような和平協定のち、アース神族とヴァン神族は、共同して

巨人族との戦いに臨むのですが、それは次回としたいと思います。

 





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水と火と木と世界創造-北欧神話2-


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「悠久なる時の始め、そこには何もなかった・・・在りしはギヌンガガプ

(ギンヌンガガップ)」と『詩のエッダ』にあるように、世界(宇宙)には

何もなかったという。砂もなければ、海もなく、冷たい波もなく、大地も

なければ天もない。ただ一面は霧に包まれていたが、その真ん中にギヌンガ

ガプと呼ばれる一つの裂け目があって、とてつもなく深く、大きく口を

広げていたということです。

 

『散文のエッダ(スノリのエッダ)』にはより具体的に書かれていて、大地

が創られるよりもはるか昔に、ニヴルヘイム(「霧または暗闇の世界」の意)

が現れ、やがて、その真ん中にフヴェルゲルミルという泉ができあがったと

いう。ニヴルヘイムは闇と寒冷が支配する世界で、ギヌンガガプの北側に

位置するとされるが、いつもすさまじい嵐が吹き荒れていたということです。

 

その泉からはいく筋もの川が流れていてが、その一つには毒が含まれていた

という。川はあまりの寒さに途中で凍りつき、毒を含んだ霧は霜となり、

幾重にも重なりながら、ギヌンガガプに迫り出していったということです。

 

また、原初のとき、ギヌンガガプの南方には炎熱世界としてムスッペル

(ムスペルスヘイム)があったとされます。そこは非常に熱く、周辺は炎

が燃えさかっていて、この国で生まれたものでなければ決して足を踏み入れ

られないほどであったという。

 

この領域を守護しているのがスルトという巨人で、彼が手にしているのが

「炎の燃え立つ剣」であるが、この剣を手にした者が世界をすべて火で焼き

尽くす、と予言的に語れているようなのです。

 

つまり、世界が創成される最初の段階において、この世を支配することに

なる神々の種族がまだ成立していないにもかかわらず、早くも彼らの滅びが

運命づけられているのです。

 

このように、北欧神話の語りの中では、ムスッペルは南方の炎熱世界として

の特徴が明らかであり、北方に布置されたニヴルヘイムの寒冷世界と対極を

なしていますが、いずれの世界も具体的にどのように成り立ったかは殆ど

記されていないようなのです。

 

ただ、水野知昭氏は、「肝心なことは、北方は「水」、南方は「火」の根源

の地であるという対立の図式が打ち出されていることだ」と『生と死の北欧

神話』の中で述べています。そして、水と火の要素は、万物の「生成」の

根源力であると同時に、「死と滅び」を招くものとして把握されていたと

しています。

 

さて、こうしてギヌンガガプの北側は、氷と霜ですっぽりとおおわれていた

が、幾重にも重なった霜に南から熱風が衝突すると、霜が溶けてしずくと

なり、やがてその命の水滴が熱を送るものの威力を帯びて人のような姿と

なり、原古の巨人ユミルが誕生したという。

 

ユミルの名は「双生」を意味していて、ユミルがまだうとうとまどろんで

いる間に汗をかき、彼の左の腋の下から一人の男と一人の女が生まれ、左

の足は右の足との間に一人の男の子を生んだ、こうして霜巨人の一族が

発生し、世界は巨人たちでいっぱいになったとされます。つまり、ユミル

は両性具有者であったということです。

 

なお、「汗」というのは奇妙な感じがしますが、それは血液をも意味する

ようで、それは、やがて、ユミルが殺されることを暗示していると考え

られているようです。

 

この世の最初の生命体としてのユミルに続いて、やがて同じようにその

溶けた霜のしずくから牝牛(めうし)アウズフムラ(アウドウムブラ)が

誕生したとされ、その乳首から四つの乳が流れ出て、ユミルはその牛に

よって育まれたという。

 

あるとき、牝牛は、塩分を含み、霜をかぶった幾つもの石をなめていた

ところ、その日の夕方には人間の髪が、翌日には頭が、そして三日目には

人間の全身が姿を現してきた。彼は容姿端麗にして力強い男で、名前はブ

ーリと呼ばれた。なお、最初の人間の誕生については別の神話で語られて

いるから、ブーリは人間の姿をしていても、正真正銘の人間ではないこと

になります。

 

そして、誰と結婚したかは不明だが、ブーリの息子としてボル(別名ブル)

が生まれ、やがて、巨人の娘ベストラをめとって、三人の子をもうけるの

だが、それがオーディン、ヴィリ、ヴェーの三神であった。

 

やがて、これらの兄弟神が成長して、ひいては天地を支配することになる

のであるが、それに先立ち、原古の巨人エミルを殺害したとされます。

ただし、この殺害の動機や用いられた武器については一切語られておらず

神秘のベールに包まれているということです。

 

ただ、大事なことは、三神による「世界最初の殺害」の行為が結果的に、

天と地、海と山など世界創造に導いたということにあるということです。

 

なお、ボルの息子たちは、ユミルの死体をギヌンガガプの真ん中へと運び、

その身体から大地を、血から海と湖を創ったとされます。つまり、その肉

から大地を、骨から岩(山)、歯と臼歯と砕けた骨から石や砂利を創り、

また、頭蓋骨から天の蒼穹(青空)、髪の毛から樹木を、そして、脳みそ

から群雲を創ったとされ、まさしく形態のアナロジー(類比)にもとづく

「死体化生神話」として位置づけられるということです。

 

ユミルの一族は血の洪水により殆どが溺れ死んだが、ベルゲルミルという

巨人とその妻だけが生き延びたので、彼らから新たに巨人族が生まれ、

存在し続けることになります。

 

こうして、世界の形は整ったが、暗闇のままだった。そこで、ムスッペル

から火花を取ってきてまき散らし、星々を創った。特に大きな二つの火花

を大空に投げあげて太陽と月を創り、大地のまわりを回らせることにした

という。

 

このようにして、大地は荒々しい海の真ん中に横たわることとなった。その

海辺の一番外側を、神々は巨人族の住居に与え、それから大地の真ん中の

土地を祝福して、ユミルのまつ毛で囲い、その垣の内をミスガルズ(ミッド

ガルド)と呼んだということです。

 

ミスガルズは、「中心の国」を意味し、「神々の国」であるアースガルズ

(アスガルド)、および外側にある巨人の国ウートガルズ(ウトガルド)の

間の文字通り中間に位置づけられているのであるが、このように北欧神話

の世界観は、基本的に「内-中心-外」の図式によって明確に分離された

構造をなしているのです。

 

ところで、ミスガルズは、のちに人間の住むところとなるのですが、まだ

存在していません。

 

では、どのようにして人間が誕生したのかということになりますが、それ

は次のように語られています。

 

ある日、オーディン、ヴィリ、ヴェーの3人の神が浜辺を歩いていると、

2本の木が岸に流れ着いているのを見つけた。それを拾って人間の形に

刻むことにし、トリネコの木から男を、ニレから女を創った。オーディン

はは命と魂を授け、ヴィリは知恵と動く力を、ヴェーは目と耳と言葉を

授けた。2本の木の幹は生命を宿して動き始め、人間の始祖である男と女

になった。男はアスク、女はエンブラと名づけられ、衣装を着せ、ミス

ガルズに住まわせた。

 

神々は、人間をミスガルズにすえると、その中央を囲って自分たちの住所

にし、それをアースガルズと呼んだということです。

 

ところで、木から人間が誕生したように、北欧神話では、木というものが

神聖視されていますが、世界の中心にユグドラシルという1本の巨木が

立っていて、それが世界を支えているとされています。

 

ユグドラシルの名前が登場するのは、神々の国アースガルズができてから

のことで、大地や空が創られたのち、芽が出て、長い年月を経て枝や幹を

伸ばし、世界を貫くほどの大きな木に成長したと考えられます。(この木

の種類はトリネコだと言われますが、長寿の木であるイチイだという説も

あるようです。)

 

その枝は全世界の上に広がっていて、天の上に突き出てそびえている。三つ

の大きな根が木を支え、遠くまで伸びている。1本の根は神々のところへ、

もう1本の根は巨人の国へ、3本目の根は霜と氷の国ニヴルヘイムまで伸び

ているということです。いずれも、それぞれの泉(ウルズの泉、ミーミルの

泉、フヴェルゲルミルの泉)に到達し、太い幹を支えているのです。

 

このように中心にそびえる宇宙樹ともいうべきユグドラシルのまわりに

ある九つの世界を舞台に神話が物語られていくのです。

 

以上、北欧神話における世界創造のプロセスを見てきましたが、そこでは、

万物の初めにあったものが、ギヌンガガプ(ギンヌンガップ)、すなわち

一つの「裂け目」であったとされています。

 

しかし、「裂け目」とは何を意味するかについては諸説あって、一つは、

「大口を開けた巨大な空域」あるいは「広がりわたった(宇宙)の亀裂」

という定義であり、一つは、「魔力に満たされた原初の空間」という解釈

であり、もう一つは、「あらゆるものの創成の始まりをなす虚空」だと

するものです。

 

水野知昭氏は、『生と死に北欧神話』の中で、<ギヌンガガプという

「大いなる口」は、万物を産みだす母性の女陰を象徴しているが、古くは

出産や豊穣を司る女神として崇拝されたものが後代に大地の下にて死者を

呑み込み、生贄や犠牲獣を求める「恐るべき母」に転落した例は世界各地で

認められる。つまり、母神あるいは女神は、しばしば創造的な側面と破壊的

な側面を兼ね備えているのである。よって、この生と死、豊穣と不毛という

女神に帰属された二面性、は、原初の太虚ギヌンガガプにも当てはまるで

あろう>と述べています。

 

さて、いよいよ神々の活動が始まりますが、北欧神話は、神々の戦い物語

だと言われています。神々と神々の戦い、神々と巨人との戦い、次回は

その戦いの様を紹介したいと思います。

 
 
 
 
 
 
 
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