アポロンとディオニュソス(上)-ギリシャ神話3-


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アポロン像  
 
 
 

アポロンとは、オリンポス12神の一柱で、ゼウスに特に愛された息子と

される男神ですが、その起源、性格、機能は、とても複雑です。

 

アポロンという語の語源は、「追い払う」、そしてまた「破壊する」という

ことを意味する古いギリシャ語と関係がありそうだと言われています。

 

アポロンの起源もまた不確かなようです。ある学者は、アポロンはアジア

にその起源を持ち、ヒッタイト(小アジアの古代民族)の神か、アラブの

神ホバルのギリシャ化したもの、あるいはリュキア(小アジア南岸に国)

の神であったと信じているが、一方で、アポロンがヒュペリボレオス人

(極北に住んだという伝説的種族)と密接な関係があったところから、

ギリシャ人が民族移動の過程で、北方から持ち込んだ北欧の神だと考える

学派もあるようです。

 

しかし、いずれの説もその明白な証拠を示すことができないため、白黒を

つけることができないのが現状のようです。

 

さて、アポロンの機能についても、これまた、きわめて多様で複雑である

ようです。

 

アポロンは、まず、第一に、光りの神、太陽神であった。けれども、太陽

そのものではなく、太陽は、別な神ヘリオスによって象徴されていました。

太陽神としてのアポロンは、大地に果実を実らせたので、デロスやデルポイ

では初穂が奉献されたということです。そして、彼は田畑を荒らすネズミを

退治し、イナゴを追い払うような、作物を保護する神でもあったのです。

 

また、太陽は、投矢のように突き刺す光でもあるゆえ、残忍であり、同時

に病気を予防する力をもつゆえ情け深くもあるので、アポロンは、突然の

死をもたらす神として、遠くから矢を射かける射手の神ヘカデボロスで

あり、しかしまた、病気を追い払う医者の神アレクシカコスとも考えられ

たようです。

 

そしてまた、アポロンは、古い予言の神でもあったのです。彼は小アジア

に早くから神託所をもっていたばかりではなく、ギリシャ全土に神域が

あって、そこへ人々が伺いをたてるために訪れると、アポロンは女神官

シビュレを介して判断を下したということです。

 

このアポロンのすべての神域のうち、最も有名なものは、深い洞窟の中に

あるデルポイの神域です。洞窟の戸口の三脚台の上に座っていた女神官

ピュテアは、神懸かりによって恍惚となり、託宣を伝える錯乱状態に陥り、

片言の句や曖昧な言葉を吐き出し始める。すると、それらの言葉は、デルポ

イの神官や神聖協議会のメンバーたちによって解釈されたということです。

 

なお、フェリックス・ギランは、『ギリシャ神話』の中で、<太陽神にこう

いう予言の役割が与えられていたということは、ギリシャでは占いは冥界

の神だけの仕事であったという事実を考え合わせるなら驚くべきことである。

アポロンがギリシャへ渡ったとき、すでにこの機能(占い)を具えていたと

考えるべきであろう。この点で、彼がアッシリア=バビロニアの太陽神シャ

マシュに類似していることに注目しなければならない。シャマシュもまた、

予言力があったのである>と述べています。

 

そのほか、アポロンは、羊飼の神でもあり、田園の神でもあり、また、音楽

の神、歌と竪琴の神でもあったとされますが、フェリックス・ギランは、

<アポロンはこのような多様な機能を持つため、彼の中には多くの人格が

浮かび、それゆえ、彼の起源の問題は、彼をギリシャ北部由来の田園神で

あるドリア人の主神と融合した、アジア起源の太陽神だ、と考えれば、

すっきりするであろう>と述べています。

 

ところで、W・F・オットーは、『神話と宗教』の中でアポロンについて

次のような見解を述べているので、紹介しておきたいと思います。

 

<最近の学者はアポロンをオリエントからやってきた神と見なしているが、

彼がもともとギリシャ前の文化に属する神であったことは疑いないとして

も、彼の形相にはオリエント的な特徴はまったく見られない。彼に神聖な

七の数をもって、彼のオリエント的な特徴を主張するようなことは論外で

ある。アポロンがホメロスにおいてさえ、不吉な死をもたらす神、つまり、

<アジア的な>神として現われている、という主張もまったくの誤解に

基づくものである。もし我々がオリエントを含めたギリシャ前の文化圏に

おいて彼が何者であったかを問うならば、その答えは太陽神だったという

ほかない。>

 

よって、アポロンの太陽神としての意味は、ホメロスのおいては背後に

退いていただけであり、のちに不吉な神から太陽神へと転じたものでは

ない。彼の本質の根本特徴を取り集めてみるならば、それらすべては古い

太陽神のよく知られた姿にまとめあげられることが直ちにわかるはずで

ある、としています。

 

さて、アポロンの誕生について少し触れておきますと、アポロンの母は、

古い伝承によるとトと言い、コイオスとポイベの娘で、ゼウスがヘラと

結婚する以前、ゼウスの妻であったとされます。彼女がゼウスとの間に

できた双子(アポロンとアルテミス)を身籠ったときに、ヘラの嫉妬に

追われ、逃げまどい、オルテュギア島(デロス島)で大変な苦難の末、

出産したということです。

 

そして、アポロンが生まれてからも、レトの苦しみは終わらなかった。

アポロンが生まれるとすぐに、ヘラは、恋敵を滅ぼしてしまおうとして

大蛇ピュトンを差し向けます。ピュトンとは、大地が生んだ牝の竜で、

ポンの乳母をつとめていたとされます。

 

しかし、アポロンは、ヘバイストスが鍛えてくれた矢でもって、ピュトン

を打ち倒し、この獲物を足蹴にして「さあ、お前は倒れたままに朽ち果て

るがよい」と言ったという。かくして、この恐ろしい戦いの場所は、ギリ

シャ語の「腐る」に由来するピュートーと呼ばれるようになり、のちの

デルポイとなったということです。

 

さて、アポロンは、大蛇ピュトンに打ち勝ったのち、荒涼としたピュートー

の聖なる森の中央に祭壇を建てたという。しかし、この場所は、住む人も

ないため、アポロンは、彼の新しい信仰に必要な神官たちをどこから見つけ

てきたらよかろうかと思案していたところ、航海中のクレタ人たちの船を

見つけ、己をイルカの姿に変え、不可思議な現象を起こして驚かせ、上陸

させて神官の任につかせたということです。

 

これがデルポイの神殿の起源とされ、また、アポロンが航海や海洋遠征、特

に植民地獲得の神の役割を持つことの説明にもなっているということです。

 

以上のことから、アポロンという神は、とても複雑な性格と機能を持つ神

ということが分かりますが、そのほかにも、彼は、射程の長い必殺の矢を

射る天界の射手であったがゆえに、幾多の戦いのなかで多くの手柄をたてた

ことで有名であり、その時の彼は、恐ろしいほど断固たる措置を下す情け

容赦のない神でもあったのです。

 

しかし、アポロンは、オリンポスの神々の間でも特に尊敬される神であった

ことは間違いなく、一方で、彼は音楽の神々のうちでも最も重要な存在で

あったとされるのです。

 

なお、これに対し、先にも紹介したW・F・オットーは、次のように述べて

います。

 

<アポロンについて、「遠矢を射る者」、浄化する者、分別・節度を命令し

秩序を確立する者、蒙をひらき救いをもたらす者、等々、様々に述べられる

のであるが、それらの一切がひとつの本質的根柢に統一されている。その

本質的根柢は、崇高な意味での「清浄さ」と呼ぶことができる。だが、もう

一段掘り下げてみるならば、この本質的根柢は音楽として現われる。言葉と

認識とが生まれ出るもととなる根源的音楽である。というのも、一切の事物

の根源には、旋律と音楽があるからである。>

 

<アポロンもしたがってまた一個の完全な世界である。彼の精神は植物界

から動物界、さらには人間に至るまでおよそ存在するもののすべての領域と

段階とに現れる。植物界では天に向かって燃えさかる炎のような月桂樹が

いちばんよく彼の証となろう。動物界では野生のもののうちで最も覚め

切った動物、オオカミが彼の神聖な獣である。むしろ、彼の化身そのもの

である。人間はほかならぬ彼の似姿である。そして、全宇宙が彼の栄光を

告げていることは、すでにわれわれが見たように、この上なく明敏な精神

の持ち主たちの証言にあるとおりである。>

 

次回は、このアポロンと対極にあり、激しく対立しあっているように見え

るディオニュソスについて触れてみたいと思います。

 






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