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シュタイナーと薔薇十字


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薔薇十字の神智学


前回は、ロラン・エディゴブルの「薔薇十字団」により、薔薇十字団の起源を

17世紀の始めとする仮説をもとに、その創造過程を「ファーマ・フラテルニ

タティス」、「コンフェッシオ・フラテルニタティス」、クリスチャン・ローゼン

クロイツの化学の結婚」の三つの文書を中心に見てきました。

 

しかし、その起源に関わる仮説は、歴史的起源、そして、神話的起源といわれ

るものを含めるとほかにも多数あるようです。

 

ロラン・エディゴブルは、ドイツの薔薇十字団がイギリスに起源をもつという

英国の歴史家フランセス・イエイツの仮説を紹介しています。

 

イエイツは、英国聖ジョージ騎士団(ガーター騎士団)の記章が薔薇と赤十字

であり、薔薇十字の象徴自体がここに由来するに違いないといい、薔薇十字

思想は「神聖文字の単子」の著者ジョン・ディーに始まるのであり、17世紀

前半の薔薇十字文書の出版は、ジョン・ディーが関わった社会的、政治的運動

にその起源があるというのです。

 

それゆえに、イギリス思想の浸透した薔薇十字宣言は、魔術的、ヘルメス主義

的、カバラ的な性格を持った大改革計画の神秘的なバックグラウンドになって

いるということです。

 

また、薔薇十字団の先祖とされる神話や思想運動というものもたくさんあり、

アダム、古代エジプト、エレウシスの秘儀、ピタゴラス派、インド思想、

グノーシス思想、アラビアとサービア教徒、などがあげられています。

 

さて、では、その後、薔薇十字団を取り巻く状況はどのようになっていった

のでしょうか?

 

ロラン・エディゴブルは、薔薇十字宣言と「化学の結婚」が流布した複雑で

豊富なメッセージのうち、崇拝者たちが心の留めたのは、二つの側面、奇蹟と

錬金術だけであったと述べています。

 

哲学者の金と霊的万能薬は、当時、過ぎ行く時間と死の恐怖を祓い去るための

絶好のシンボルだった、よって、これらの秘法(アルカナ)を所有する神秘的

なグループに、薔薇十字団という名は付せられ続けていったということです。

 

黄金薔薇十字団などという、後の世紀に幅をきかす黄金という形容詞は、薔薇

十字の神話が錬金術という要素に還元されてしまったことを示すものであると

しています。

 

そして、薔薇十字団は、テンプル騎士団の継承という伝説を付加するとともに、

フリーメイソンと交差、融合していくことになるようです。

 

ところで、一方では、薔薇十字団に関心を抱き、その評判に耳を傾けたり、

それを繰り返して人に伝えたりした哲学者、芸術家、作家などが、たとえば、

デカルト、コメニウス、ベーコン、ニュートン、ライプニッツ、ゲーテ、

等々、大勢いたようであり、また、19世紀以降、「黄金の夜明け団」、

「薔薇十字カバラ団」、「古代神秘薔薇十字団」、ルドルフ・シュタイナー

と人智学協会など、薔薇十字を名乗る団体は、幾つか出現したようです。

 

そこで、これらのうち、シュタイナーのいう薔薇十字会、そして、ゲーテ

と薔薇十字会に関わりについて紹介しておきたいと思います。

 

近代ヨーロッパにおける薔薇十字系の霊統を代表するとされるシュタイナー

によると、ある高次の霊的存在が受肉し、クリスチャン・ローゼンクロイツ

と名乗った。彼は小さな秘教的グループの師として姿を現し、1459年、

結束固い秘密の同胞団、薔薇十字会において黄金石の騎士(薔薇十字的秘教

の霊統における高次の秘儀に参入したもの)になったということです。

 

薔薇十字会の神智学はという叡智は、18世紀に至るまで、強固な規則に

よって外的、公教的社会から隔離されて、ごく少数の限定された同胞団の

中で守られてきたそうです。

 

しかし、この同胞団は、秘教的な霊統を中部ヨーロッパの文化の中に注ぎ

込むという使命を持ったというのです。よって、公的な文化の中で、確かに

外見上は公教的なものであるが、公教的な表現をまとった秘教的叡智が

さまざまな仕方で輝いているのを見ることができるとしています。

 

ただし、何世紀にもわたって、さまざまな人が薔薇十字の叡智を看破しよう

としたものの、たとえば、ライプニッツなども、その叡智を解明しようと

して果たせなかったといいます。

 

だが、そんな中で、薔薇十字の叡智がとりわけ雄大な形で反映しているのが、

18世紀の転回期におけるヨーロッパ文化、ひいては世界文化に大きな役割

を果たしたのがゲーテだとシュタイナーはいいます。

 

ゲーテは若い頃に、ある程度まで薔薇十字の源泉に達し、最高の秘儀の幾つ

かを伝授されたというのです。ただ、ゲーテの秘儀参入については誤解が

あるとしています。

 

ゲーテがライプツィヒ時代の終わりに死に瀕したという外面的な事実として

知られていることですが、彼の魂はある体験に深くとらえられます。重症の

床の中で、ゲーテは重大な体験、一種の秘儀を体験したというのです。彼は、

最初、この秘儀体験に気がつかなかったが、この体験は一種の詩的な潮流と

してゲーテの魂の中で活動し、この潮流が彼のさまざまな作品の中で見事な

形で流れ込んでいったのです。そのような秘儀の光が彼の周囲がゲーテの作品

のうちで最も深いものと呼んだ未完の長篇詩「秘密」の中に見出すことが

できるとしています。

 

しかし、当時の文化の潮流は、この詩の中に脈打つ生命の非常な深みに外的

な形を与えるだけの力をまだ有しておらず、ゲーテはこの作品を完成させる

ことができなかったということです。

 

その後、ゲーテはこの秘儀を意識化し、ついに偉大な散文詩「百合姫と緑蛇

の童話」を書くのですが、シュタイナーは、この散文詩は世界文学の中でも

最も意味深い作品の一つであり、この作品を正しく解釈できれば、薔薇十字

的叡智について多くを知ることができると述べています。

 

しかしながら、当時、薔薇十字の叡智が一般的な文化の中に流れ込んだと

いうことは、薔薇十字的な叡智に対するある種の裏切りが行われたという

ことにもなるとシュタイナーはいいます。

 

この秘密の叡智の公教的な形での公開という裏切りと、西洋文化が19世紀

には物質界において秘教の影響を受けてはならないという必要性があった

結果、薔薇十字の源泉、とりわけ薔薇十字会の創設以来、常に物質界に

存在し続けてきたクリスチャン・ローゼンクロイツは外面的には姿を隠す

ことになり、今日(20世紀)になって再び薔薇十字の叡智の源泉を解明

することが可能になったのだと述べています。

 

さて、シュタイナーは、薔薇十字的叡智の特徴とその社会的使命をよく表し

ている二つの重要な事柄があると言っています。

 

一つは、薔薇十字の叡智のさまざまな立場の人々に対する関わり方で、それ

はキリスト教的グノーシスの霊智の秘教的形態とは異なるものであるとして

います。

 

まず、高次の霊的能力、つまり、霊視霊聴能力を発達させることなしに、

高次の世界の霊的真実を直接見出すことはできないという意味で、霊的真実

の発見には霊視力という前提が不可欠であるが、霊的真実の概念としての

薔薇十字の叡智は通常一般の論理的悟性によって理解できるといいます。

 

また、薔薇十字的な師と弟子の関係は、東洋における弟子と「師(グル)」

の関係とは本質的に異なるもので、権威に対する信仰とは異なるとして

います。師は霊的体験の範を示し、弟子をそのような体験を導く友であり、

助言者であると述べています。

 

もう一つは、霊的叡智の一般的な精神生活に関する関係で、薔薇十字の叡智

は、単に理論的に価値ある体系を打ち建てるのではなく、現代の知の根底を

認識しようとし、霊的真理を日常生活に流入させようするときに必要なもの

を提供するとしています。

 

つまり、脚を折った人が道に倒れているところを通りかかったとして、多数

の人々が骨折した人を取り囲んで温かい感情と同情を抱いたとしても、その

中の一人も骨折を治療する術を知らなかったら、この多くの人々は、感情

豊かでなくとも骨折を治療できる一人の人に本質的に劣る、というのが、

薔薇十字会員の精神なのだと述べています。

 

ところで、シュタイナーは、最後まで、自分の導師(マイスター)の名を

明かさなかったようですが、導師たちは、40歳になるまで、オカルト的

領域で指導的立場に立たぬよう忠告をしていたということです。

 

シュタイナーは、著書「神智学」の付録1の中で、導師たちについて、

わずかですが次のように触れています。

 

「導師との出会いは即座に生じたものではなく、最初は或る人物が彼から

送られてきた。この人は、一切の植物に薬効に詳しく、植物だけでなく、

自然界全般と人間との関連の神秘にも通じていた。彼にとって、自然霊と

交わるのは自明なことであり、それを当然のことのように話題にしたので、

ますます私の驚嘆を呼び起こした。」

 

「その頃、私は自分の背後のオカルト的諸存在の要求と一致して、自分に

対して次のようにいえるようになった。― お前は世界観に哲学的基礎づけ

を与えた。・・・このオカルティストは時代の哲学的、自然科学的成果も

知らないで、霊界のことをこのように語るのだ、とはもう誰もいえない

筈だ。・・・私はすでに40歳に達していた。」

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
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テーマ : 心、意識、魂、生命、人間の可能性
ジャンル : 心と身体

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