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変貌するスサノオ


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スサノオの変貌 



日本神話のなかで好きな神はというと、それはスサノオだという人が多い

ようです。

 

確かにスサノオは魅力的であり、冥界の母イザナミを恋慕って泣き続け、

山や海を破壊し、父のイザナギに追放される神。そして、姉のアマテラス

が支配する高天原(たかまがはら)では、コントロールできない力のまま

に暴れまわる荒ぶる神であります。

 

しかも、二度目の追放先である出雲に降ってからは、多頭の大蛇ヤマタノ

オロチを倒し、生贄のクシナダヒメを救う英雄へと変貌します。そして、

スサノオの子孫オオナムジは出雲の新たな支配神オオクニヌシへと成長

するが、それをバックアップしたのが根之堅州国(ねのかたすくに)の

大神スサノオであったというのです。

 

また、スサノオ神話の魅力は、古代史研究者や神話学者、民俗学者たちを

も惹きつけたようで、スサノオは暴風雨・自然神か、人文的英雄か、と

いった論争を引き起こしたり、母の喪失と希求、大人になりきれない

「永遠の少年」といったユング派の神話解釈の対象となったり、比較

神話学者からは、ギリシャ神話のエチオピアの王女アンドロメダを海の

怪物から救うペルセウスとの類似性が指摘されたりしているようです。

 

はたして、スサノオは荒ぶる悪神なのか、怪物退治の英雄神なのか、それ

とも地下の冥界の支配神なのでしょうか?

 

我々が知っているつもりの「記紀神話」、つまり、『古事記』と『日本書記』

間でもスサノオというものが、よく読むと異なった姿をしていますので、

まず、そこから見ていきたいと思います。

 

『古事記』によると、イザナギは、死んだ妻のイザナミを追って黄泉国

(よみのくに)へおもむくが、腐敗した妻の死体を見て恐ろしくなり逃げ

帰ってくる。黄泉国の追っ手から逃れ、妻との離縁を宣言し、筑紫の阿波

岐原(あわぎはら)で穢れを祓うために禊をしたとき、洗った左目から

アマテラス、右目からツクヨミ、そして鼻からスサノオが誕生した。

 

アマテラスとツクヨミはイザナギの命令にしたがって、「高天原」「夜の

食国(おすくに)」の支配につくが、スサノオだけは父イザナギの命令

に背き、死んだ母イザナギのいる「妣国(ははのくに)根之堅州国」に

行きたいと大人になるまで泣き喚き、そのために山の木々を枯らし、

海川の水を干上がらせてしまう。そこで、イザナギから「この国に住む

べからず」と追放される。

 

追放されたスサノオは、姉のアマテラスが支配する高天原におもむくが、

ここでもコントロールできない力のままに、アマテラスの神聖な神殿を

穢し、神の衣を織る機織り女を殺害し、高天原の秩序を破壊してしまう。

そしてついにアマテラスを岩屋へ籠らせてしまい、高天原と地上を永遠

の闇の世界に陥れたが、やがてアメノウズメが神がかりの舞をはじめ、

八百万の神々による祭りを受けてアマテラスが岩屋から迎え出される。

と同時に、スサノオも八百万の神たちに多数の罪の贖(あがな)い物を

差し出し、「祓へ」を受けて、高天原から追放され、出雲の国へと降り

立っていく。

 

たが、出雲を舞台とした神話からスサノオのイメージは一変する。今まで

の荒々しい神から、ヤマタノオロチの犠牲になるクシナダヒメを助け、

オロチを退治する英雄神へと変貌する。かくして、スサノオはオロチの

尾から発見した神聖な剣をアマテラスに献上し、出雲の土着の神の娘

クシナダヒメと結婚し、出雲の新たな神になる。その子孫にはオオクニ

ヌシが誕生し、のちのは「根之堅州国」でオオクニヌシをバックアップ

する祖神=老賢者の役割の役割を担うことになるというものです。

 

このように、『古事記』におけるスサノオという神は、一義的な性格づけ

を拒否するような、きわめて多面的で矛盾に満ちた相貌をもつことが

わかりますが、『日本書記』におけるスサノオ神話のストーリーはどの

ような展開を見せるのでしょうか?

 

まず、スサノオがイザナミの死後、イザナギの禊から生まれたという展開

は、実は、『古事記』のみに伝わるもののようです。

 

『日本書記』では、スサノオはイザナギ・イザナミの両親から生まれて

います。なぜなら、『日本書記』ではイザナミは死なず、黄泉の国のエピ

ソードも出てこないのです。(ただし、「一書」のなかにはあります)

 

その理由は、『日本書記』が陰陽説にもとづく神話であることにあるよう

です。『日本書記』では男神のイザナギは「陽神(おかみ)」、女神のイザ

ナミは「陰神(めかみ)」と表現され、陰陽の関係が男女に配当される

のです。

 

陰陽の気の運動で天地が作り出されるように、陽神と陰神の交歓・和合に

よって、国土・万物が誕生・生成していくのであり、もし陰神のイザナミ

が途中で死んでしまうと、陰陽の二気の片方が消滅することになり、その

時点で世界の生成が終わり、世界は滅んでしまうのです。

 

よって、『古事記』ではイザナミは死んで黄泉の国へ行くが、陰陽説にも

とづく『日本書記』では、陰神たるイザナミの死は語られないということ

になります。

 

そして、『日本書記』では亡き母を恋しがるという話はないわけですから、

スサノオが「根国」へ追放される理由は異なってきます。

 

つまり、『日本書記』では、スサノオは生まれついたときから泣き喚き、

そのために自然を破壊し、人民を早死にさせるような乱暴者で、天下を

支配する資格はないとして「根国」に追放する形になります。

 

イザナギ・イザナミは天下を支配するものを生もうとしたのだが、それに

失敗してしまったということになります。

 

では、スサノオはなぜ生まれつき乱暴な神として生まれたのでしょうか?

 

『古事記』では、イザナギ・イザナミは天の御柱を旋回して、互いに愛情

表現を発して子供を生もうとしたが、女神であるイザナミが最初に言葉を

発したために、ヒルコやアハシマという出来損ないの子が誕生したという

兄弟婚神話の痕跡を残したパターンをとりますが、『日本書記』の一書では、

女神が先に喜びの声を発し、「陰陽の理」に反したためにヒルコやスサノオ

が誕生したとしています。

 

「陰」の神イザナミが最初にアクションを起こしたのでは、「陽」から始まる

という「陰陽の理」に反し、その違反の結果、ヒルコやスサノオという悪逆

の子が生まれたというのです。

 

スサノオは陰陽の道理に反した状態で誕生した神であり、世界の秩序を犯す

存在であるから、「悪神」として遠い「根国」へと追放されたのです。

 

しかし、『古事記』の場合は、スサノオがみずから「妣国根之堅州国」に

行きたいと訴えたところに『日本書紀』とは異なるに重要なポイントが

あるようです。

 

イザナギにすれば、死の穢れを受けたため禊をして清浄な状態になった

ときにアマテラス、ツクヨミ、スサノオという尊い三神を得たのに、

あろうことか、そのなかのひとりの神子が穢れた死の国である黄泉国

=根之堅州国へ行きたいなどと主張したため、怒って「この国に住む

べからず」と追放したのです。

 

そして、追放されたスサノオはアマテラスのいる高天原でも暴れまわり、

今度は高天原の神々から二度目の追放をうけたとすると、『古事記』の

スサノオもやはり世界の秩序を破壊していく「悪神」といえるようです

が、そう単純には「悪神」とは規定できない面があるのです。

 

出雲の降ったスサノオはヤマタノオロチを退治して、クシナダヒメと結婚

します。二人の間に生まれた子供の六世がオオナムジ、すなわち、後の出雲

の支配者となるオオクニヌシですが、異母兄弟のいじめを受けたオオナムジ

は、みずからの先祖であるスサノオがいる根之堅州国へと逃れ、スサノオ

に助けを求める。

 

スサノオは、根之堅州国の「大神」として再登場するのですが、根之堅州国

は、先祖神がいる他界という意味では死後の世界であるが、そこは黄泉国の

ように死体が腐っていく穢れた国ではなかったようなのです。

 

オオナムジにとって、根之堅州国は地上に豊穣をもたらす根源的な力が

ひそむ場所としてあらわれてくるのであり、スサノオもまた、世界の秩序

を破壊した荒ぶる神というイメージとは異なる「大神」と呼ばれるような

相貌を見せているのです。

 

つまり、オオナムジにとって、根之堅州国という他界は、「大国主神」=

大いなる国の主の神へと成長していくイニシエーションの舞台であったと

いうことになります。

 

そして、古事記におけるスサノオのオロチ退治譚は、スサノオが出雲という

土地の支配神=始祖神となると同時に、あらたな王であるオオクニヌシに

力を授ける老賢者へと「成長」していくためのイニシエーションだと解釈

することができるのではないかということです。

 

このように、「記紀神話」として一括されてきた古代神話のスサノオは、

それぞれのテキストをよく読むと、陰陽の理に反して誕生した悪神と

してのスサノオ、一方で、荒ぶる神でありながら、オロチ退治の英雄へ、

そして、土地の始祖神、冥府の老賢者へと成長する神等、まったくと

いっていいほど違う神の姿が見えてくるのです。

 

次回は、記紀神話におけるこのようなスサノオの変貌の原因、理由に

ついて考えてみたいと思います。










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