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「生と死の北欧神話」


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生と死の北欧神話   


今回は、オーディン(オージン)、トール、ヴァルキューレ、ロキ、

ヘル、等々、断片的ではあるが、けっこう耳にする神々や巨人族などが

登場する北欧神話とは、一体、どういうものなのか、を追ってみたい

と思います。

 

さて、北欧神話とは、水野知昭氏の『生と死の北欧神話』によると、

870年-930年にノルウェーからの植民者によってアイスランドに

持ち込まれ、彼らの子孫によって口承で伝えられ、その後、古アイス

ランド語(あるいは彼らの故地で運用されていた古ノルド語)で文字

表記されたものを指すようです。

 

もっとも、アイスランドが全島集会においてキリスト教を受け入れたのは、

西暦1000年頃であり、神話的な資料がそのまま古い信仰を映し出して

いるとは言い難く、近年の研究によればラテンや部分的にはギリシャの

古典文芸の影響も無視できないとされているようです。

 

なお、水野氏知昭は、北欧神話のなかに認められる思考パターンや世界観

は、直接的な資料として存在しないゲルマン神話を部分的に反映している

可能性があるが、昨今の我が国における「ゲルマン神話」の概説書にある

ように、決して両者を同一視してはいけないと述べています。

 

 

さて、北欧神話の根幹をなすものとして二つの「エッダ」というものが

あります。

 

一つは、『詩のエッダ』で、13世紀頃の王室写本に保存された29篇、

および他の写本に収められた数篇の詩歌の総称です。いずれも作者不明で、

多くはノルウェーで創作され、詠じられていたとされるが、詩歌の題材

よっては、大陸(ゲルマニア)もしくはデンマークに起源を求めるべき

ものもあり、数百年の口承の伝統を背景にして成立したことをうかがわせる

ということです。

 

基本的には、ノルウェーからの植民によってアイスランドにもたらされたが、

詩歌の伝統が長らく保持されたアイスランドにおいて、なかには独自に創作

された詩歌もあるとされています。扱う題材によって神話詩と英雄詩に

大別されるが、これは便宜的な区分であって、必ずしも区分は明確では

ないようです。

 

『詩のエッダ』のなかでも創作年代が古い(9世紀末~10世紀初め)

される「巫女の予言」においては、巫女は、神々による天地創成をはじめ

として、過去の古きことにさかのぼりながらも、そこから引き出される

未来の、起こるべきことを予見し、光の神バルドル殺害の事件と神々の

没落、そして新世界の再生までを、「幻視の体験」として語りだすのです

が、それは、まさに「創造と破壊」、「生と死と再生」が基本テーマに

なっているということです。

 

もう一つは、『散文のエッダ』と言われるものです。これはアイスランド

の有名な学者であるスノリ・ストルルソンが作者とされ、別称『スノリ

のエッダ』とも呼ばれています。

 

これは、1220年代の前半に書かれたもので、北欧神話を語りながら、

詩語の用法や韻律を解説したもので、若い詩人や詩を習熟したい人の

ための教科書の形態をとっているようです。

 

その構成は、(1)「序言」(2)「ギュルヴィの幻惑」(3)「詩語法」

(4)「韻律一覧」の四部から成り立っていますが、(1)と(2)に

論点をしぼって語りの特徴をいうと次のようになります。

 

まず、(1)「序言」は、全能なる神によって天地が創造され、アダムと

イヴから人類が始まったと説き、ノアの箱舟の記述もあって、キリスト教

の色彩の濃いことから、別の作者によって後代に付加されたとも考えられ

ているが、世界はアフリカとヨーロッパとアジアの三つに領域からなると

され、このうちアジアが世界の中心に位置し、美と光輝と富に満ちあふれ、

そこに住む人々も知恵と強さと美しさとあらゆる技量に恵まれていると

されます。

 

とりわけ、トロイアは、いかなる点においても優れ、ムノンあるいはメン

ノンという王が12の王国を支配したとされるが、そのムノンから数えて

20代目がオーディン(オージン)であり、彼には予言の才があって、その

叡智によって自分の名声が世界の北の地域において確立されることを悟った。

 

そこで、一族郎党を率いて北に向けて移住を開始する。かくして東サク

ソニー、レイズゴタランド(現ユトランド)、デンマークを経て、スヴィー

ショーズ(現スウ―デン)に至ったというのです。

 

そして、スウ―デンの王ギュルヴィは、自分の王国においてオーディン

に望むだけの権限を与えたという。つまり、土着の王が進出者にみずから

進んで統治権を移譲したかのような記述になっているようなのです。

 

また、オーディンはシグト―ナに都を定め、トロイアと同じ方式で12

の統率者を配し、すべてトロイアと同じ法を制定した、と述べられている

ようです。

 

水野知昭氏によると、「序言」には神を神格化された人間とみなす「エウ

ヘメリズム」と外来の王にまつわる「移住神話」、および比較的平和な

「国譲り」という三つの特色が認められるということです。

 

オーディンが古代トロイア王国の出身であるということは、そのまま信じ

る必要はないが、北欧に外来神の信仰があったことは認めることができる

としています。

 

また、「国譲り」というのは、古事記において高天原からタケミカヅチの

神が出雲に降臨したとき、先住のオホクニヌシの神がさしたる抵抗もなく

「葦原の中つ国」を天神に献上したこととの類似性を指すとしています。

 

さて、(2)「ギュルヴィの幻惑」は、ケヴンという名の旅する女性が

ギュルヴィ王を訪れ、ある「娯楽」を提供した報酬として、土地を譲り

受ける約束を得たところから話が始まります。

 

そのとき王は「四頭の牛が一昼夜のうちに牽くことのできる分の耕作地」

をケヴンに与えることを約束したのだが、時を経て、ケヴンは巨人と

の間にもうけた四頭の牛を一つの犂(からすき)につなぎ、さる土地の

一画を猛烈な勢いで深々と牽引させます。

 

こうして、ある海峡で牛が動きを止めたとき、ケヴンはそこに土地を

確定し、名前を与えて、セルンド(現デンマークのシュラン島)と呼び

ならわした。一方、ごっそりと地面が削り取られた跡には、ロクル湖

(現スウ―デンのストックホルム周辺のメーラル湖)ができたという

ことです。

 

しかし、奪われた土地の跡に大きな湖ができ、その北岸を進入者の王に

譲り渡したで語りが終わってしまってはスウ―デン側からすれば収まり

がつかないはずです。

 

よって、失地王となりはてたギュルヴィは、アース神族(ケヴンはアー

ス神族のひとりとされる)の超自然的な力に感服し、こんどはその叡智の

よって来たれる秘密を探るために、老人の姿に身をやつし、ガングレリと

名乗ってアースガルズをめざして旅立ちます。

 

ギュルヴィの旅のことを予見した神々は、彼に「幻惑の魔術」をかけ、

幻の館において王と3人の神々との間で問答が繰り広げられていきます。

ギュルヴィ王を歓待し、彼の質問につぎつぎと解答を与えてゆく3人は、

ハール、ヤヴンハール、そしてスリジという名前であるが、それは

すべてオーディンの別名でもあるのです。

 

その問答のなかでギュルヴィは、原初の混沌から宇宙創成にいたるまでの

プロセス、そして世界を支配した神々など、さまざまな話を聞き出して

いるのですが、その語りのなかには、人間の創成、神界の構成、こびと

族の発生、世界樹と運命の泉、妖精族の特徴、オーディンを主宰神と

する神々の特性、ロキの一族、神界を中心に発生した銘記すべき出来事、

あるいはソール神とロキの旅、ミズガルス蛇を釣り上げる話、そして

バルドル殺害の事件など、その他もろもろの神話的情報が含まれていて、

最後にラグナロクと称する「神々の滅びゆく定め」と世界没落、そして

世界の新生にいたるまでの語りを聞かされるという構成になっていると

いうことです。

 

水野知昭氏は、「古代の叡智ともいうべき神話が、ここではひとりの世俗的

な王の幻術体験という「枠組み」の内部に封入されている。いわば、強大

な一幅の絵画の「額縁」のなかにはめ込まれたものは、神話的な物語の

全体像を示唆しながらも、実はその一部抜粋でしかないのである。この

ような構成は「神話作者」スノリ・ストルルソンにとって、資料を取捨

選択する上できわめて好都合な方式であったと言えるであろう」と述べて

います。

 

かくして、つぎつぎと問答が展開されてゆき、最終的にギュルヴィは、

その「幻惑の詐術」から覚醒し、野原で幻惑のなかで見たり聞いたり

したことを人々に語って聞かせたということです。

 

しかし、これは質問者であるギュルヴィが3人の回答者たちから、まさに

に知恵(神話的情報)を収奪していったことを意味することになり、ギュ

ルヴィが自分に幻術をかけた者たちを結果的には出し抜いたと言えます。

 

さて、こうなると「幻惑の陥穽」にはめたれたのは一体どちらの側なのか

がわからなくなります。

 

結局、双方とも相手を惑わしているのですが、このややこしい幻惑の枠組

み構造について、水野知昭氏は「このように「幻惑とだまし」が交錯した

「枠組みの構造」は、13世紀当時のキリスト教が支配的な社会において、

その外なる世界から異教の信仰を守る難攻不落の要塞の役割を果たしたに

違いない。なぜならば、はるか昔の、アイスランドから遠く離れたスウ

―デンのギュルヴィ王の「幻惑の見聞録」という体裁を取っているかぎり

は、キリスト教の価値観に照らした、いかなる非難、中傷も受ける謂れが

ないはずだからである。」と述べています。

 

なお、詳しく述べませんが、このような『スノリのエッダ』や『詩のエッダ』

とは異なるもう一つの北欧神話を描く体系として『サガ』というものがあり

ます。「サガ」とは「物語、語り」を意味することばですが、大きく分ける

と四つに分類され、北欧神話をより深く読むための資料となっています。

 

以上、北欧神話を理解するためのバックグラウンドをざっと見てきましたが、

次回からは、神々による世界の創成から、神々の戦い、そして神々の没落に

いたる北欧神話の神髄を紹介していきたいと思います。



 
 
 
 
 
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