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ラグナロク(神々の没落)-北欧神話5-


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北欧神話の世界 



ロキの奸計によって殺されたバルドルの亡骸を船にて葬送するときには、

オーディンとフリッグの夫婦神はもちろんのこと、ヴァン神族の兄妹神

フレイとフレイヤばかりか、霜巨人と山巨人の多くも参加していたという。

 

だが、この葬礼参列者たちは、ラグナロクという「世界の終末」において、

みな滅び去ることが運命づけられている者たちのようなのです。彼らは、

バルドルをひとしく自分たちのスケープゴート(贖罪の山羊)として海の

彼方に送り出したかに見えますが、バルドルの放逐は、はたして彼らの罪や

穢れを祓うことになるのでしょうか?

 

どうも、このアースやヴァンの神々や巨人族が参列しているバルドルの葬礼

には神々の番人と言われ、巨人や魔物たちが襲来するラグナロクが到来する

とき、ギャッラルホルンという角笛を吹き鳴らし、神々に覚醒をうながすと

いう神、ヘイムダルも駆けつけているようなのです。

 

その彼が登場するということは、それでも逃れることのできない運命づけ

られた最後の戦闘のときが真近に迫っていることを暗示しているらしい

のです。

 

さて、ロキの一族は、いずれも業罰をこうむり、束縛されています。ロキの

息子とされるフェンリル狼は、グレイプニルという名の魔法の足かせをかけ

られた上に、ゲルギャという枷をはめて、神界の岩で身動きがとれないよう

にされ、同じく、ロキの息子とされるミズガルズ蛇も大地を取り巻く海の

真ん中に投げ入れられ、自分の尻尾を噛むという「円の呪縛」をこうむって

おり、そして、ロキ自身はバルドル殺害の後で、鮭に変身して逃げるが、

神々によって捕らえられ、自分の息子ナリの腸でもって頑丈な三つの岩に

捕縛され、その頭上から蛇の毒が滴るように仕向けられて苦しんでいる

状態なのです。

 

しかし、ラグナロクの時がいたるや、すべての足枷と縛(いまし)めは破壊

され、ロキを先導者としてムスペッル(「世界の滅び」の意)の軍勢が東

より攻め寄せてくることが予言されています。

 

その理由としては、前回、引用した『生と死の北欧神話』において、水野

知昭氏は、<ロキに対して、必要以上にバルドル殺しの責任が着せられて

いるのは、まさしくロキ自身が、神々が創造行為の過程で犯した過去の罪業

を背負わされているからにほかならない。巨人族の出身でありながらアース

神族の仲間入りをしているロキは、二つの異なる世界の境界的存在者である。

純粋無垢のバルドルとは異なり、「犠牲者」に仕立てられたロキの両義性は、

神々ばかりか、巨人族やロキの一統なる魔物たちの「邪悪と災厄」をも祓い

清める結果となるのだ。ラグナロクの最終決戦において、彼らが結集して

「神々を滅ぼす軍勢」となりうる由縁はそこにある>としています。

 

束縛されて横たわっている魔物、そしてそれを破壊して逆襲する怪物とは、

世界破壊を待ち受ける際の恐怖を象徴的に表現していると思われますが、

いかなる時に、このような呪縛が解け、魔物たちを解き放つことになる

のでしょうか?

 

水野知昭氏は、「それはオーディンの愛息バルドルが殺された時」だと言い

ます。「あらゆる称賛を集中して浴びていたバルドルが「円形を成す神々

の集団」の、まさに「真ん中」で殺されたという伝承事実に改めて着目

すべきだ。」と言うのです。

 

北欧神話に描き出された世界観によれば、人間の住む大地はミズガルズ(

ミッドガルド「中つ国」)と称され、その外側が「円形をなして」いたと

される。そして、ミズガルズ蛇については、来るべき大災難と不幸を予知

した神々の計略とオーディンの神力によって、「すべての地を取り囲む深い

海」の中に投げ入れられ、大きく成長した後にも、その海原の「真ん中」

で自分の尻尾を噛むように仕向けられたということであり、この世界は

三重、四重に「円形をなすもの」によって成り立っているという考えが打ち

出されているとしています。

 

そこで、ロキはその「円形」の外側にいたホズを唆し、「円の集団」に参加

させた。こうして彼を下手人に仕立て上げ、バルドル殺しを実現した。まさ

に「束縛と解放の図式」の体現者であったロキが、バルドル殺しの教唆者と

化すことによって、神界の「真ん中」に位置する「神々の円」を破砕した、

そして、そのことによって、ロキの息子とされる魔物たち、とりわけミズ

ガルズ蛇を、世界の外縁を形づくる円の呪縛から解き放ったと読み解くこと

ができると述べています。

 

こうして、ラグナロクの最終決戦は開始され、巨魔たちの大攻勢のさなか、

「炎熱の国」ムスッペル(ムスペルスヘイム)の守護者であったスルトは

燃ゆる剣を振りかざして突き進んできます。オーディンはフェンリル狼と、

ソールはミズガルズ蛇と対決し、フレイ神はスルトと相対し、それぞれ

壮絶な戦闘を繰り広げることになります。

 

オーディンは狼に飲み込まれるが、息子ヴィーザルが直ちにその復讐をとげ

ます。ソールはミズガルズを見事討ち果たしますが、みずからもその毒を

浴びて死にます。フレイはその時、剣を所持していなかったために苦戦を

強いられ、ついに敗れ去ることになります。

 

ール神は冥府の犬ガルムと相討ちにとなり、ロキを迎え撃つヘイムダル

も、同じく相討ちに終わります。そして、スルトは火炎を放ち、全世界が

焼き尽くされます。

 

予言が語るように、神々も巨人族も、人間の族もことごとく滅んでゆき、

天がはり裂け、星々が落ち、大地は海に没するのです。

 

しかし、これで北欧神話の語りが終わりを告げるわけではありません。

 

『詩のエッダ』の「巫女の予言」では、時を経て、海の中より再び「とこ

しえに緑なす大地が浮かびくる」とされるのです。そして、不思議にも

バルドルは、自分を殺したホズとともに、この世によみがえってくる、と

うたわれているのです。

 

水野知昭氏は、<バルドルと、その仇敵であったホズの蘇生、それは積年

の敵意と不和の解消を象徴し、まさに多くの犠牲を払うことによって、

「平和と豊穣」の時代が再来することの予兆となっている。>

 

<「ありとあらゆる災厄が吉に転じよう、バルドルは来たらん」という予言

は、「バルドル殺し」の事件がひとつの「畏敬すべき運命的な出来事」と

して繰り返し生じうるが、その惨劇を経験することによって、世界が更新

され、バルドルは再来するだろう、という民の期待と祈願が存在していた

ことを示している。>

 

<こうしてラグナロクの試練をくぐりぬけて、何人かの者たちが生き残った。

ヴィーザルとヴァ―リ、そしてソール神の息子なるモージとマグニたちだ。

それぞれ「勇武」と「強力」を意味し、まさに次代を担う若き勇者の登場を

物語っている。>

 

<また、とある森の中で朝露で命をつなぐ者がいて、彼らから新たに人類が

発するとされる。ちょうど、ユミル殺害のあとに発生した大洪水を生き残っ

た巨人がいたのと同じように。まさに、すべてのものが滅んだ後の「夜明け」

の記述であり、大いなる死のあとに生の胎動がはじまる。と同時に、円環的

な神話の語りがここで完結をみることになる。>と述べています。

 

ところで、神々の破滅に関するこのようなラグナロク神話というものに対し、

研究者の間で「ラグナロク」をヴァイキング時代にキリスト教の影響下で

創造されたものとする見解と、これらの表象を、北欧の太古の土着的な根源

から流出してきたものと見なす見解があるようです。

 

アルセル・オルリックは、著書『北欧神話の世界-神々の死と復活-』の

なかで、今までどちらの側でも、問題全体の総合的な論及は行われなかった

としながら、エッダ以外の北欧の民族信仰などの基礎資料を検討した結果、

「ラグナロク」が全体としてキリスト教起源を有する確率は決定的に失われ

たと述べています。

 

つまり、キリスト教からの借用として強調する特徴の大多数、たとえば、

世界炎上・悪の終結・至福者の住まい・一切を統べる神といったものは、

北欧共通の民間伝承には発見されないものの、個々のいくつかの基礎資料

には発見しうることを強く主張できるとしています。

 

そして、アルセル・オルリックは、北欧の「ラグナロク」はその根源をキリ

スト教には有しておらず、関連しているのは他の民族の太古の諸表象である

と結論づけています。(もっとも、「巫女の預言」には、キリスト教の影響が

認められるとしていますが。)

 

他の民族の太古の諸表象とは、一つは、西方からのケルト的流れであり、

もう一つは、東方からの流れである。ケルト人からは没落の全体的な特徴を

借用し、東方民族からは荒々しい未開性、フェンリル狼の来襲による直接的

な恐怖を借りたとしています。

 

かくして、北欧的所産というべきものは、「ラグナロク」神話全体ではない。

北欧的なのは、全存在が描かれる際の暗い背景として没落を固持する憂鬱

さである。没落になることを承知している恐るべき合戦を凝視する沈着冷静

な真摯さが、北欧的なのである、と述べています。

 
 
 
 
 
 
 
 
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