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「宮崎アニメの暗号」を読む

 

もののけ姫2



「風立ちぬ」を最後に宮崎駿は引退を表明しましたが、「風の谷のナウシカ」

や「となりのトトロ」を始め、数々のアニメ作品の衝撃が今も強く心に残って
います。

 

新作が公開されるたびに映画の興行記録を塗り替えてきた宮崎アニメは、一般

的には、万人向けの明快なるエンターテインメントの天才、まさにエンターテ

インメントの匠であると考えられているようです。

 

しかし、ただ、感動した、面白かった、で終わるのではく、私自身がそうで

あったように、少なからぬ人が、面白かったけど・・・と何かしらわだかまり

を抱きながら帰途についたのではないかと思います。

 

さて、「宮崎アニメの暗号」で青井汎氏は、そのようなわだかまりの原因として

宮崎アニメの背後の隠れているモノは何か? 宮崎駿の「真情」生み出す「仕掛

け」とは? と問い、本書の意図をそうした不可視の「仕掛け」を明確な意図

へと変化させ、そこから宮崎駿の本当の世界観を導き出すことであるとして

います。

 

まず、一見すると、「ルパン三世 カリオストロの城」、「風の谷のナウシカ」、

「天空の城ラピュタ」、「魔女の宅急便」、「紅の豚」などの作品は、欧州もし

くはそれを基にした平行世界を描いているように見えます。また、「風の谷の

ナウシカ」の巨大なホムンクルス(人造人間)である巨神兵の製造シーンを

見ても、そこには四大元素を操る錬金術師たちの影を見ることができます。

として、宮崎アニメと要素との関係を理解するには、やはり西洋的な考え方

を導入しなければならないのでしょうか。と問いかけ、西洋の四大元素には

「木」がないところから「風の谷のナウシカ」においてすでに陰陽五行の思想

が駆使されているのではないか、そして、五行思想をはじめとする重層的な

「仕掛け」の集大成が「もののけ姫」ではないかと述べています。

 

ともかく、青井汎氏は、宮崎駿の思想は、「もののけ姫」において頂点に達し

として、多くのページを費やしています。

 

「もののけ姫」の基本的構図を人と自然の対立、つまり、「エボシ御前」と

「シシ神」の対立であるとし、

 

エボシ御前=金気=土神(産鉄の神)・金屋子神(製鉄の神)=ケルトの女神

ブリギット

 

シシ神=木気=森=五色の鹿=麒麟=動物の王=ケルトの有角神ケルヌンノス

=原インド・インダス文明の有角神パシュパティ=メソポタミア・ギルガメシュ

叙事詩の森の神フンババ=旧石器時代洞窟壁画・トロワ・フレールの呪術師

 

と、どんどん隠された暗号を解いてゆき、そこには、東西の古代思想、神話が

幾重にも埋め込まれており、石器時代以降の長大な人と自然の相剋の歴史が

浮かび上がってくるとしています。

 

そして、シシ神の池の辺で、人間を代表するエボシ御前が石火矢で放った金属は、

自然を代表するシシ神の首を貫きました。その瞬間、宮崎アニメの畢生の主題とも

いえる「自然と人との相剋」は極限まで達し、それをこの頂点にこの主題は一応の

終止符が打たれたのではないでしょうか。』『そして、同時に、それは宮崎アニメを

支えていた「現実感」をも崩壊させる渾身一撃だったのです。』『崩壊した現実の先

に広がるのは、何でもありのファンタジーの世界に他なりません。』『その空間に生

まれた世界こそが「千と千尋の神隠し」の異界なのです。と結論づけています。

 

たしかに、「もののけ姫」以降、宮崎駿は、引退をほのめかすようになったよう

です。それ以降、一作ごとに引退を口にするようになったようですが、引退を

表明しては、次作をひっさげて復活するということを繰り返す、その真意は一体

どこにあるのでしょうか。

 

どうも、「もののけ姫」は、興行的には大成功したものの、難解という評価が多く

あったようであり、また、登場人物の影が薄い、個人が描けていない、感情移入

ができないという辛口の評価もあったようですが、啓示的、象徴的な世界構造を

具体的、現実的に表現しようとして、詰め込みすぎた「真情」が溢れ出し、エンタ

ーテインメントの枠組みそのものを壊す寸前まできてしまったのかもしれません。

 

「真情」の表現のあくなき追求とエンターテインメントとしての興行的成功との間

にある大きな矛盾、その壁を突破しようとして復活を繰り返したのでしょうか?

そうではなく、その限界を感じ取って引退を表明したものの、エンターテインメント

の天才である彼の引退をまわりが許さなかったために復帰せざるを得なかったので
しょうか?

 

今現在、彼は引退を表明したままですが、ひょっとすると、4度目(?)の復活
をひそかに目論んでいるのかもしれません。

 
 
 
 


 
 
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